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映画『スオミの話をしよう』 どんなスオミが見たかったろう?(ネタバレ感想文)

監督:三谷幸喜/2024年 日(2024年9月13日公開)

愉快に楽しく観ました。ケラケラ笑っちゃった。

ネタバレになるから詳しく書けませんが、冒頭から黒澤明『天国と地獄』(1963年)のパロディーなんですよ。そりゃ当然鞄を投げるよね。
電話がかかってきた時に三船敏郎はシャワー浴びてるんだけど、坂東彌十郎はカプセルの中で寝てやんの www。

他にも、関係者全員を一室に集めて名探偵が謎解きをするのも、アガサ・クリスティー的なパロディーを意図しているのでしょう。
実際、三谷幸喜は、野村萬斎をエルキュール・ポアロ(役名は勝呂すぐろ武尊たける)にした『オリエント急行殺人事件』、『黒井戸殺し』(『アクロイド殺し』)、『死との約束』を原作に忠実に翻案したドラマをやってますし、好きなんですよね。

そうしたパロディー的な面ばかりでなく、喜劇としても面白かったです。
一番笑ったのは(これもネタバレになるから詳しく書けませんが)、実は別人が料理を作っていたことを知らされた坂東彌十郎が、普通なら驚いたりショックを受けたりする場面で、「この前のローストビーフは火が通り過ぎてたぞ!」って的外れな逆ギレするの。
坂東彌十郎が巧いんだ。喜劇にハマる人。

ただ、映画というよりも三幕構成の舞台という印象なんです。
そのせいかどうか分かりませんが、映画でしかできない演出にこだわっているような箇所があって、カメラが浅い被写体深度でピン送りを多用するシーンがあるんです。
だから何だって訳でもないんですが、観ていて「映像にしかできない演出だな」と思ったら、逆に全体が「舞台」的に見えてしまったというか。

あと、これは全く個人の趣味の問題なんですが、私は、あの女優のファンだのこの女優が大好きだの小池栄子先生だの生まれ変わったら小松菜奈になりたいだのと年がら年中言ってる恋多き中年男性ナイス・ミドルなのですが、長澤まさみがね……ちょっとハマらないんですよ。別に嫌いなわけではないんですけど。
後にテレビで観た『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)では「長澤まさみというサナギが映画女優に孵化する瞬間を映画館で立ち合うべきだった」と後悔しましたし、その後『タッチ』(05年)も『ラフ』(06年)も映画館に足を運びましたしね(<単なるあだち充ファン)。
舞台でナマ長澤まさみも見ましたよ。
本谷有希子作・演出の『クレイジーハニー』。2011年だったかな。単なる本谷有希子ファンですけど。

ナマ長澤まさみの印象は「脚長えー」。
それは演出する側も分かっているんでしょう。
実際、この映画でも三谷幸喜は、ミニスカで階段を登らせるという演出をしていますしね。
本谷有希子の舞台でも、ミニスカ&ハイヒールの長澤まさみがステージから乗り出さんばかりに仁王立ちして情緒不安定なイカレタ毒舌を吐き散らかしてましたから。本谷有希子のクレイジーワールド。

そういう訳で、私にはスオミがあまり魅力的に見えなかったんです。
いや、もう、完全に個人の趣味の問題なんですけど、女優にハマったらウヒウヒ観られたかもしれません。
誰だったら楽しかったんだろ?女優七変化モノ(<そんなジャンルはない)なら、市川崑『穴』(1957年)の京マチ子七変化はお洒落だったし超楽しかったな。

あなたはどのスオミがお好みでしたでしょうか?
私はどのスオミも魅力的ではありませんでした。
もしかすると、三谷幸喜は「誰のものでもない独立したスオミが一番魅力的に見える」ことを意図したのかもしれませんけどね。

(2024.09.16 吉祥寺オデヲンにて鑑賞 ★★★☆☆)

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