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映画『ゴールド・ボーイ』 コッテリ香港映画の盛り。盛り過ぎ(ネタバレ感想文 )
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金子修介なら観に行かなきゃという謎の使命感で映画館に。
ま、そんなに金子修介作品を真面目に追ってるわけじゃないんですけどね。なんなら観てない作品の方が多いんですけど、時折律義に『プライド』(2008年)とか『神の左手 悪魔の右手』(06年)とか観てるんですよ。
私は金子修介を、実に腕の良い職人だと思っています。
本当にこの人の演出は丁寧で破綻がない。
この映画も絶妙で、変ないい方ですけど、主人公の少年少女の絶妙な拙さが妙にリアルなんですよね。あんまり「プロ」感が漂っちゃったら逆に興ざめすると思うんです。
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どういう経緯で、中国で配信ドラマ化された中国原作を(近年の中華ミステリーはレベルが高い)、香港(なのかな?)プロデュースで金子修介が撮ることになったんでしょうね?
そのせいかどうか分かりませんけど、途中までは台湾映画っぽくって良かったんですけどね。
終盤、急にコテコテ香港映画になっちゃう。
あまり書いたことないですが、分かる人には自明の事ですけど、台湾映画と香港映画と、そして中国(本土)の映画は全然違う。
ま、台湾(中華民国)と中国(中華人民共和国)は別の国ですけどね。
香港映画は、基本、無国籍感があるんです。
そもそもブルース・リーですしね。
一方、台湾映画は内省的なんです。
もっとも、そうなったのは、楊德昌とか侯孝賢とかの台湾ニューシネマ以降ですけど。
その流れをくんだ『青春弑恋』(23年)で、私のエドワード・ヤン好きを無駄に語りましたけどね。ま、ホウ・シャオシェンは嫌いなんだけど。
台湾ニューシネマ以前は香港映画に似てたんですよ。
胡 金銓の『侠女』(1970年)とかね。
この映画、リマスター版を観てるけど、ワイヤーアクションの元祖みたいな映画よ。
ちなみに中国本土の映画は、娯楽作品も内省的な作品も幅広くあるんですが、香港や台湾よりも垢抜けないと言うか、「大地」感がある印象です。
(あくまで個人の感想です)。
で、『ゴールド・ボーイ』に戻りますけど、途中までは『恋恋風塵』(89年)的な味わいがあったんですけどね。料理に例えるなら台湾映画は味わい深い。ところが最後は『男たちの挽歌』(86年)のコッテリ味になっちゃう。みんな大好き化学調味料(ケレン味)たっぷり。
倒れた男女が手を伸ばし合ってウオー!とか、超香港映画。
正直、味が濃すぎ。
これ、金子修介じゃなかったら下品な作品になってたと思うんですよね。
(2024.03.31 TOHOシネマズ日本橋にて鑑賞 ★★★☆☆)
金子修介といえば平成ガメラ3部作ですよね。