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映画『配達されない三通の手紙』 カッコいいタイトルだけどね(ネタバレ感想文)

監督:野村芳太郎/1979年 松竹

日曜日と映画サービスデーが重なった12月1日。ヨメの体調不良のため映画館行きを断念し、ケーブルテレビで何気なく観始めたらついつい最後まで観てしまった作品。
いや、以前から気にはなっていた作品なんですけどね。
だって、「配達されない三通の手紙!」って言いたいじゃない?
ミステリーらしいカッコいいタイトル。
声に出して言いたい日本語。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす!」とか。
えーっと、他に郵便関係で数字が付くものはないかな?

元々興味があったのは、監督:野村芳太郎、脚本:新藤兼人という、喰い合わせの悪そうなカップリング(笑)。
そして(ほぼ予備知識なく)観始めたら、出てくるわ出てくるわ豪華俳優陣。

父親が佐分利信、その奥さんが乙羽信子。
その娘たちが小川眞由美に栗原小巻に神崎愛。
栗原小巻の婚約者が片岡孝夫で、その妹が松坂慶子。
神崎愛の婚約者が渡瀬恒彦。
なに?この豪華キャスト?面白そう!
あと蟇目良ね。どうしてこの話に日系アメリカ人という設定の役が必要だったか全くわからないけど、蟇目良。声に出して言いたい蟇目良。

この話、エラリー・クイーンが原作だそうで。
私は、エラリー・クイーンが当時別名義で書いていたというドルリー・レーン物(『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』)は全部読んでいるのですが、エラリー・クイーン物は一つも読んでない。
ちなみに『Wの悲劇』は夏樹静子ね。私、おじいさまを殺してしまった!

で、エラリー・クイーン物は読んでないんですが、この映画は、海外古典ミステリーの悪い所がそのまま出ている気がするんです。
無駄に登場人物が多いしさ、入り組んだ設定をグダグダ説明するしさ。
ストーリーが転がりだすまで40分くらいかかってるぜ。

黒澤明『天国と地獄』(1963年)も海外ミステリー原作ですが、冒頭5分で手に汗握るものね。もっとも、翻案物というより設定だけ拝借したに過ぎませんし、エド・マクベインの原作も1959年と近しい時代でしたから。

一方、この1979年の映画の原作『災厄の町』をエラリー・クイーンが発表したのは1942年。つまり、翻案には、国境も時間も越えなければならなかったわけです。
そして、野村芳太郎にも新藤兼人にも、日活無国籍映画みたいな荒唐無稽を是とする割り切りはない。あくまで昭和54年の山口県萩市というリアルの中で物語を進めようとする。

無理。

野村芳太郎は横溝正史原作『八つ墓村』(77年)でも失敗してるけど、松本清張以外は向いてない気がするのは私だけでしょうか?

それで言ったら、個人的には曾根中生監督『不連続殺人事件』(77年)の方が好きです。原作は坂口安吾なんで翻案物ではないんですけどね。
坂口安吾が戦後すぐ(1947-48年(昭和22-23年))に、海外(古典)ミステリーを真似て書いた小説なんです。読みましたけどね、海外古典ミステリーの悪いところも全部真似してる(笑)。
なかなか珍作の原作を30年も経って映画化したら、やっぱり珍作だったという愛おしい珍作(笑)

ああ、そうか。
1970年代の日本は、松本清張原作・野村芳太郎監督『砂の器』(74年)から始まったミステリーブームの真っ只中で、松本清張に続く柳の下のドジョウを探していた時期だったんだ。
ちなみに二匹目のドジョウは、市川崑『犬神家の一族』(76年)の横溝正史ですけどね。

そうかあ、この70年代ミステリーブームが、80年代にライト化方向に進化したのが赤川次郎なんだな。
薬師丸ひろ子の出世作『セーラー服と機関銃』(81年)とか。
私、おじいさまを殺してしまった!(<だから夏樹静子だって)

(2024.12.01 BS松竹東急にて鑑賞 ★★★☆☆)

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