映画『魅せられて』 若い娘にオジサン達はしゃいじゃって、いい加減にしなさいよ(ネタバレ感想文 )
「永遠女優 甦る青春のアイドルたち <1980-90年代編>」という企画上映をやってまして、そこでこの映画を観たわけです。
『天使とデート』(1987年)のエマニュエル・べアール見たかったかも。
いや、やっぱり見たくないな。だってべアール姐さんは、天使よりも小悪魔の方がお似合いだから。
こんな企画なもんだから、映画館の観客も中年オジサンばっかりでしたよ。
「いい年こいたオジサン達が若い娘にはしゃいじゃって、いい加減にしなさいよ」と思っていたら、まさかの映画自体がそういう内容だったんでビックリした。
実は初めて観たのです、この映画。
ベルトルッチ、あんまり好きじゃないんだ。
『ラストエンペラー』(87年)、『シェルタリング・スカイ』(90年)、『リトル・ブッダ』(93年)の「東洋三部作」と呼ばれる御大層な映画を撮ってたベルトルッチが久々イタリアに帰ってきましたぁって作品で、
「肩の力が抜けた佳作で案外いいんだよ」って噂を聞いていました。お噂はかねがね。それで以前から観たいと思っていたんです。
話としては小品というか、薬師丸ひろ子の『メイン・テーマ』(84年)と同じです。そういう意味では正しいアイドル映画。20年も生きてきたのにね。
これは、リヴ・タイラーを観察する映画です。
冒頭から、リヴ・タイラーの隠し撮りで始まりますしね。
彫刻家のオジ様も「俺が観察する」的なことを言いますし、なんだかワカラン同居人たちの話題の的ですし。
リヴ・タイラーは異国の地で父親を探すので周囲を「観察する」のですが、同時に周囲から「観察される」映画でもあるのです。
おそらく、リヴ・タイラーを芸術の女神に見立てているのでしょう。
彫刻家は彼女のおかげで創作意欲がわきます。
白血病のジェレミー・アイアンズは(元劇作家とか言ってなかったっけ?)彼女に(最後の)恋をしたのでしょう。
そして何より、監督のベルナルド・ベルトルッチがリヴ・タイラーに「魅せられて」いるのが分かります。
いい年こいたオジサン達が若い娘にはしゃいじゃって、いい加減にしなさいよ。
そういった意味では結構「私小説」的なんですよ。
実際、リヴ・タイラーも本当に実の父親と育ての父親が違うそうですしね。
そしてベルトルッチの「創作意欲」は彫刻家に投影され、「(果たされない)恋心」はジェレミー・アイアンズに投影されたのです。
こんな美人でピチピチした19歳処女が娘だったらいいな、彼女だったらもっといいな、という監督の想い。
ベルナルド・ベルトルッチ(当時55歳)、いい加減にしなさいよ。
あ、今の俺の年齢だ。
そうした儚いオジサンの想いを込めた映画だと思っていたら、最後に大逆転劇が起きるんですね。
ついにリヴ・タイラーをものにする純朴青年。
「俺らこんな村いやだ。アメリカさ出るだ」
お前もベルトルッチの分身じゃねーか!いい加減にしろよ!
(2022.09.25 シネ・リーブル池袋にて鑑賞 ★★★☆☆)