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映画『お葬式』 あるある映画と見せかけたありあり映画(ネタバレ感想文 )
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何を今さら伊丹十三を語ることがあるのか自分でも疑問ですが、先般CS放送をなんとなく観ていたら、面白くて、つい最後までしっかり観てしまったので感想を書きます。
(もっとも、なかなか筆が進まなかったのですが)
この映画を観るのは、公開時と、その後、二十数年前に観て以来。初見時に高校生だった私は、高瀬春奈の尻がデカい!というのが一番の感想でした。
あまり観ていない理由は、伊丹十三、あんま好きくないから。
いや、嫌いでもないんですけどね。
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この監督デビュー作は、衝撃をもって受け止めましたよ。世間も私も。
どちらかというと私は熱狂的に支持した方でした。
やっぱり当時としては新鮮でしたしね。
本作は「あるある」映画なんですよね。実話というか私小説に近い。
次作『タンポポ』(1985年)は「ないない」映画なんですよ。ゴリゴリのフィクション。
その実話とフィクションの中間にちょうどいい塩梅で位置したのが3作目『マルサの女』(87年)で、それが大ヒットしたわけです。印象的なテーマ曲も含めて、伊丹十三が映画の全てを手に入れた感がありました。
フェリーニのように「私は映画だ」とまでは言いませんでしたが、「今の邦画と僕は違う土俵で戦っている」的なことを発言し始め、この辺りから伊丹十三が鼻についてきた(笑)
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でもね、あれから三十年。十三が少し分かってきたんです。
あ、これからちょっと話が脱線しますね。
大佛次郎の遺作で『天皇の世紀』という幕末を描いた未完の歴史小説があるんです。
これがテレビで「ドキュメンタリー」として製作されている。
1973年10月から翌年3月までの2クール全26話。
そのレポーターが伊丹十三。
レポーターどころか、製作にも深く関わっていて、再現ドラマの役者として出演したり、番組の構成をやったり、何話か演出も手掛けているんです。
私、このドキュメンタリーを観たんですよ。
放映権とか権利関係とかあったのかな?再放送もない、DVD化もされていない、たぶん視聴率も悪かったんでしょう、滅多に見られない貴重な番組だったようなんですが、なぜか2012年に日本映画専門チャンネルで全話放送したんです。
これが滅法面白くて。
激動の幕末を「ドキュメンタリー」として表現するんですが、歴史家や大学の先生なんかが出てきて話す他に、再現ドラマなんかがあるわけです。
その再現ドラマが、衣装は時代劇でロケは現代(当時)の京都で撮影してたり、大政奉還の現場には実況アナウンサーが登場してテレビ中継したり。
覚えてるのは「廃仏毀釈」の回。たしか伊丹十三が演出も担当した回だったな。番組冒頭、リポーターの伊丹十三は囚われの身で、罪人を閉じ込める籠の中からレポートを始めるの。
何が言いたいかというと、「映画監督・伊丹十三」の源流を、この『天皇の世紀』で垣間見た気がするのです。
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『お葬式』は、伊丹十三が初監督作品で何でもやりたがっている感じがします。
カーチェイス、トリック撮影、360度パン、ミュージカル(東京だよおっかさん)、ラブシーン、縦移動、横移動、長回し、役者の独演・・・もう映画的なことは何でも「ありあり」。
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「あるある」映画じゃなくて「ありあり」映画。
こういう画面面白いでしょ!ってのが、『お葬式』でも『天皇の世紀』でもある。
そして、「日本人とは」というテーマが根底にあるような気がするのです。
特に「食」と「性」ね。
でも、何て言うのかな、普遍的な人間性というより、日本人固有の(土着的な)人間性というイメージなんですよ、伊丹十三作品は。
(2023.11.25 CSにて再鑑賞 ★★★★☆)