映画『カモン カモン』 (ネタバレ感想文 )未来の君たちが自由に塗ればいい
先に結論めいたことを書きますが、劇中紹介される書籍「星のこども」だったかな?の中で「その星は色や音が溢れている」といったことが言われます。
この映画は「音」に溢れています。
しかし、「色」はありません。
おそらく、この映画でインタビューに答える子供たちが、この世界の未来をカラフルに染めていくのでしょう。
そういう願いが込められた映画だと思います。
この映画は、縦軸が新手の『クレイマー、クレイマー』(1979年)、横軸が子供たちのインタビューを通した「時代の切り取り」で構成されます。
縦軸は「鶴の恩返し」と言ってもいい。自分の生活の中に子供という異物が放り込まれて、主人公が変化していく。割と王道の物語です。
私は、この映画の真骨頂は横軸の「子供たちへのインタビュー」にあると思います。
実は、我々「大人世代」よりも、そして我々大人世代の「子供時代」よりも、今の子供達は世界を「肯定的」に見ている。未来に「希望」を持っている。そして、否定的な視座よりも肯定的で希望を持った視座の方が世界を「良い方に」変えられる。私はそう思っているんですね。
私と同世代のマイク・ミルズも同じことを思ってるんじゃないかな。
日本に関して言えば、盗んだバイクで走り出したり夜の校舎窓ガラス壊して回ったりするのが「若者の反抗の象徴」ともてはやされた結果、「若者の牙を抜く」ことが大人たちの子育てになった。若者の可能性を潰すことが大人の役割になった。だから日本は凋落したんです。
「この世界の色は未来の君たちが自由に塗ればいい」
この映画は、大人たちの反省と、子供たちに向けた応援歌のような気がしてなりません。
(2022.05.04 TOHOシネマズ日本橋にて鑑賞 ★★★★☆)