記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『菊豆』 いろんな意味で燃えるコン・リー(ネタバレ感想文)

監督:チャン・イーモウ/1990年 中国・日本
(HDレストア版日本公開2024年12月27日公開)

張芸謀チャン・イーモウ自身が監修したというHDレストア版を『紅夢』(1991年)に続いて映画館で鑑賞。
約30年ぶりくらいの再鑑賞で初の映画館での鑑賞。
もしかすると、チャン・イーモウ作品で一番好きかもしれません。

チャン・イーモウ作品で一番官能的だと思うんです(直接的なベッドシーン描写はほとんどありませんが)。
ある種、谷崎的でもありますしね。
ただ、谷崎のような倒錯的な話というよりも、「因果応報」話になっていますけどね。まあ、その辺は中国的なんですかね。

ついでに言うなら、谷崎的な極めて狭い世界の話でもないんですよ。
閉じた世界の話ではあるんですが、割と長い期間の話。
中国映画は「私小説」的な小さな話よりも「一代記」的な大きな話が多い気がします。ま、私の勝手な思い込みですけどね。

で、この映画の中心となるのは、主人公・菊豆チュイトウの感情の流れです。
その感情は、染物屋の設定を活かして映画的にも描写されますが、何と言ってもコン・リーに尽きると思うんです。
弱さも、強さも、したたかさも、もろさも、繊細さも、大胆さも、全部包括した女性像。この映画のコン・リーは完璧。

チャン・イーモウ40歳。コン・リー25歳。
当時、恋人同士だったという話ですが、チャン・イーモウがコン・リーのために作った映画と言ってもいいくらい、コン・リーの全てが詰まった映画。

(2024.12.29 シネマート新宿にて再鑑賞 ★★★★★)

余談
忘れてましたが、この映画は日本との合作だったんですよね。
製作に徳間書店、製作総指揮に徳間康快の名前があります。
皆、角川春樹ばかり語りたがりますけど、徳間康快も日本映画史上の重要人物だと思うんですけどね。
なにせ徳間康快が『風の谷のナウシカ』(1984年)を製作しなかったら、今のジブリは無いからね。

そう考えると、徳間書店が大映映画を買収し、その後、徳間書店が傾いたら大映は角川書店に吸収されたのも因果を感じますな。

この記事が参加している募集