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映画『お母さんが一緒』 コント親ガチャハズレの娘たち(ネタバレ感想文)

監督:橋口亮輔/2024年 日(2024年7月12日公開)

原作・脚本はペヤンヌマキ。
彼女の作品は、小泉さんの舞台で一度観たことがあります。

監督は橋口亮輔。
実は橋口亮輔だとは知らずに、本公開時は観逃していました。
私は『ハッシュ』(2001年)と『ぐるりのこと。』(08年)が好きで、実は今回も『ハッシュ』を観に行ったら同時上映だったという(苦笑)。

橋口作品って、痛くて辛いんですよ。
『ぐるりのこと。』なんか、ずっと泣きながら観てた。
大傑作なんだけど、泣きながら観てたことしか覚えていない。
『恋人たち』(15年)に至っては、痛々しすぎて本当に嫌だった(笑)。
そのせいで橋口亮輔を無意識に避けていたんですが、久しぶりだったのは向こうが撮ってなかっただけだった。9年振りの新作だって。

ゲイで鬱の橋口亮輔…って書くとなんだか悪口みたいですけど、橋口作品を読み解く上で重要な「個性」だと私は思うんです。
彼の感性は、とても繊細だと感じています。

映画としては、江口のりこ&内田慈様&琴音ちゃんのドタバタを愉快に観るというのが「入口」なのでしょう。
でも、橋口亮輔が三姉妹物に興味があるとは思えなかったんです。
男性の尻を映すことには興味があると思うんですけどね
(実際、この映画でも青山フォール勝ちの尻が映る)。
そのせいかどうか、前半、かなりノレずに観ていました。
舞台的な設定や台詞回しにも違和感がありましたし。

そしたら、途中で気付いたんです。
これは、橋口亮輔のゲイ鬱と、ペヤンヌマキのブス毒がリンクした、なかなか「黒い」映画だと。
「親ガチャで毒親を引いた子供たちの末路」と考えると分かりやすい。
橋口亮輔映画ってどれも(というか私の知る限り)、「家庭環境」「生活環境」という背景が大きく横たわっているような気がします。

結婚できるのできないの、子供を産むの産めないの……
ペヤンヌマキは「女性」の物語として書いたと思うんですが、橋口亮輔が描く「ゲイ」の永遠のテーマとリンクしているように思えます。

そして、この映画で一番グッとくるのは、青山フォール勝ちの「母ちゃんすげえよ」独白なんですが、親って大切だなって改めて感じました。
『ハッシュ』でも、ヤサグレ片岡礼子様の「あたし、一度でも誰かにギュッと抱きしめられていたら、こんな風にならなかったと思う」という名台詞があるんですが、「親の愛情」とか簡単な言葉で済ませちゃいけないんでしょうけど、とっても大切。

いや、親に限らず、恋人でも先生でも職場の上司でも、長い時間一緒にいる人の「思考」って感染すると思うんです。
私も、妬み嫉み不平不満、そういう黒い思考に触れるのが嫌になってTwitter(現X)を辞めたらすごく気が楽よ。毎日楽しい。
noteで映画感想書いといてナンですけど、SNSなんか辞めた方がいい(笑)

ただ、私はこの映画を「黒い話」「毒親物語」と受け止めてしまったので、このラストをどう見るか……。
過去の橋口作品を考えたら「希望」と見るべきなんでしょうけど、私には「とってつけ」にしか見えなかったんですよね。

琴音ちゃんはこの能天気で優しい男と結婚したら笑顔の家庭が作れるかな?
でも、この青山フォール勝ちは浮気しそうだな。
てゆーか、青山フォール勝ちとか和田まんじゅうとか、面倒くさい名前だな。

(2024.12.07 目黒シネマにて鑑賞 ★★★☆☆)

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