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映画『almost people』 ほのぼの系と思いきや石井岳龍大暴れw(ネタバレ感想文 )

監督:横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄/2023年 日(2023年9月30日公開)

最初に情報を。
4話オムニバスの映画です。
4人兄妹それぞれを主人公にした、喜怒哀楽(エピソード順は喜怒楽哀)が欠けた4人の物語です。

第1話「長男のはなし:"Voice Recorder"」
監督:横浜聡子
脚本:いながききよたか

横浜聡子、宇野君好きよね

第2話「長女のはなし:"Humanoid"」
監督:石井岳龍
脚本:いながききよたか

あ、ここでも『ベイビーわるきゅーれ』だ。

第3話「次男のはなし:​"Still Ok"」
監督・脚本:加藤拓人

木竜麻生可愛い

第4話「次女のはなし:"Honeymoon Baby"」
監督・脚本:守屋文雄

我が家では山内ケンジ作品でおなじみの岩谷健司

喜怒哀楽が欠けた4人の逸話と書きましたが、裏の流れとして「男と女」の物語があります。

第1話は女っ気のない長男ですし、行動を共にする宇野祥平君は「まだ付き合ってるとはいえない」彼女がいるようです。
第2話では、なんだか唐突に三角関係が登場します。「告白される」という解釈の方が正しいかもしれません。
そして、第3話「同棲中のカップル」、第4話はゴールインという流れです。

情報は以上。
以下、感想。

私が映画館に足を運んだお目当ては横浜聡子。

『ウルトラミラクルラブストーリー』(2008年)もう一度観たいな。
『ジャーマン+雨』(06年)スクリーンで観たいな。どこかで上映してくれないかな。
横浜聡子の名を出したら必ず言うことにしてるんですがね、誰かが実現してくれるかもしれないから。

私は横浜聡子作品に対して、「土着性」を感じる一方で「この世とあの世を散歩しているような浮遊感」を感じています。わかりやすく言うと「妄想好き」ということなのかもしれません。
そう考えると、この第1話はシックリくるんですよ。少なくとも私には。
なんか、もう、フワフワしてんの。もしかすると、横浜聡子の目には渋谷が「黄泉の国」に見えてるのかもしれないな。

そんなわけで、ふわふわのんびりクスッと可笑しいほのぼの系映画かと思われた第1話から一転、「ギュイーン!」と歪んだギターが鳴り響いてから急転直下。石井岳龍ワールドの幕開け。
ハッキリ言ってこの映画、(3,4話はいいとして)横浜聡子と石井岳龍の何たるかが分かってないと、「なんじゃこりゃ!?」映画だと思うんです。

かくいう私も、語れるほど石井岳龍作品を観てないんですけどね。
石井聰亙時代の代表作『狂い咲きサンダーロード』(1980年)も爆裂都市BURST CITY(82年)も観てませんし、石井岳龍改名後の代表作『生きてるものはいないのか』(2012年)や『ソレダケ』(15年)も観てません。
観てるのは、『逆噴射家族』(1984年)、『エンジェル・ダスト』(94年)、『五条霊戦記』(2000年)、『シャニダールの花』(13年)、『蜜のあわれ』(16年)、『パンク侍、斬られて候』(18年)くらいかな。
結構観てるな。

ま、俺の「結構映画観てるぜ」自慢はさておき、このオムニバス映画、石井岳龍のパートだけトーンが違うんですよ。笑っちゃったもん。
他は市井の人、というか、almost people(だいたい人=ちょっと何かが欠けた人)の私小説的な「小さな話」です。
でも、石井岳龍だけ「目を覚ませ!」「革命だ!」「大衆を信じるな!」「吐き気がするほどロマンチックだぜ!」トーンなんですよ。
いや、一番最後のは、日本を代表するパンクバンド遠藤みちろうザ・スターリンなんですけどね。
ちなみに、吐き気がするほどロマンチックな「ロマンチスト」のPVは石井聰亙が撮ってるそうです。

こうして石井岳龍が暴れた結果、変な映画なんですけど、なんだか記憶に残るんです。面白いとか面白くないとか関係なくね。
もしかすると、石井岳龍のパートがなかったら、すぐに忘却の彼方に行ってしまう映画だったかもしれません。
確かに、「観てるぜ自慢」で先に挙げた石井岳龍作品は、どれもこれも何かしら印象に残っているんです。
面白いとか面白くないとか関係なくね。
映画鑑賞後に夫婦で酒を飲みながら結構盛り上がった映画でした。
面白いとか面白くないとかは関係ないけどね。

(2023.10.08 渋谷ユーロスペースにて鑑賞 ★★★☆☆)

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