映画『夜明けの夫婦』 (ネタバレ感想文 )男の「逃げ腰」を描く山内ケンジ
私は『友だちのパパが好き』(2015年)以来、山内ケンジ監督のファンです。
後追いで『ミツコ感覚』(11年)も観ましたし、『At the terrace テラスにて』(16年)では偶然舞台挨拶に遭遇してサインもいただきました、平岩紙の。いきなり余談ですが、この映画で父親役をしている岩谷健司さんが、映画館の座席で偶然隣でした。特に声もかけませんでしたが。
そうそう、「自己紹介読本」という舞台にも行きました。
なので、というわけでもないのですが、この映画の意図もよく分かります。
一応あらすじを公式サイトから引用
おそらく、コロナ禍の終息を「夜明け」に例え、お得意の「大人の恋愛(不倫・不貞)」を絡めながら、「コロナ禍で人と人の接触が無くなったら子供産まれないよね」「子供は社会の宝/産む産まないは個人の自由」問題といった感じのお話し。
まあ、だいたい、子作りを意識すると勃たないもんです。一方で、イケナイ関係は本来以上に燃えるもんです。
公式サイトによれば、こういうウリのようです。
「純粋社会派深刻喜劇」と公式が言ってるのでそういう意図なんでしょうけど、
んー……
山内ケンジはメッセージ的なことを声高に叫んだりしないから好きなんですけどねえ。
もっとも、私自身がこの問題から目を背けて生きてきたから嫌なんでしょうけど。
「私は子供が嫌いだ!」と伊武雅刀の如く言って生きてきましたから。私は子供に生まれないでよかったと胸をなでおろしています。
「人の悪意がゴロンと提示されるファンタジー」というのがこれまでの山内ケンジ評だったのですが、メッセージ性が強すぎちゃってファンタジー感がなく、生々しさしかない。
あと、山内ケンジは男の「逃げ腰」を描く作家だと思うんです。
いや、正しくは「攻める女と逃げる男」という構図がこれまでのスタイルだったように思います。
でも今回は、女性たちが迷ったり悩んだりする。
良し悪しは別として、何かこう、今までの作風と違う印象を受けました。
この前観た是枝の『ベイビー・ブローカー』(2022年)は、家族を超えた社会で子供を育てるというある種の理想論を提示していました(それが韓国で実践できているのかどうかは知りませんが)。
一方、本作は日本という国が子育てを「個人の問題」に押し付けていると言っているような気がします。
(2022.07.25 新宿ピカデリーにて鑑賞 ★★★☆☆)