映画『太陽の少年』 ビー・バップ・スタンド・バイ・ミー(ネタバレ感想文)
この監督の作品は『鬼が来た!』(2000年)が好きだったんです。
香川照之はいい役者だったな。
その時に、この『太陽の少年』を見逃したことを後悔して、ぜひ観たいと願って四半世紀、この度4Kレストア完全版にてやっと初鑑賞。感謝感謝。
年上の女性に淡い恋心を抱く少年の気持ちは痛いほどよくわかりますし、よく描けていると思います。
あの、髪に水(お湯)をかけるシーンは良かったな。
鈴木清順『陽炎座』(1981年)なら「骨に沁みます」と言う場面だ(<わかりにくい話を…)
しかし、結論を言うと、なんでしょう、似たような素晴らしい映画をたくさん観過ぎちゃってるんですかね。うん、まあ、そういうことですよ。
悪い映画ではないんですけどね。
なんといってもこの手の話は、私の中で、エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)が立ちはだかる。
思い出しただけでも鳥肌が立つ236分の衝撃。ま、台湾ですけどね。
文化大革命で言ったら、そりゃもう『さらば、わが愛/覇王別姫』(93年)なわけですよ。
中国の歴史という意味では、本作の監督チアン・ウェンが役者として有名になった『紅いコーリャン』(87年)をはじめとする一連のチャン・イーモウ作品もそう。
あるいは、セルジオ・レオーネ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84年)なんかも彷彿とさせます。ま、イタリア移民のマフィアの話ですけどね。4Kレストア上映してくれないかな?観に行くよ。長い映画だけど。
つまり、国の歴史や民族という大きな背景の中での個人の話、見方を変えれば、個人の物語を通じて歴史や民族という大きな背景を描く、そういう映画作品の一角を担う作品ではあります。
ただ、列挙した映画群(どれもマイベスト★5映画)との大きな差は、本作がノスタルジー話に終始してしまう点のような気がします。
まあ、他の映画と比較して出来の良し悪しを言うのは、あまりいい映画評ではないですけどね。
この映画、途中で、(語り部の)記憶があいまいで・・・みたいなことを言い出すじゃないですか。
それやられちゃったら、画面の中のことが全部信用できなくなるわけですよ。前のめりで観てたのが、急に肩透かしを喰らった感じ。
あと、ノスタルジー系が好きではない。はっきり言って嫌い。
『スタンド・バイ・ミー』(85年)とかね。
私は映画に没頭して、なんならスクリーンに飛び込みたいと思いながら観ているんですが、ノスタルジー系って、既に成人した語り部が「昔は良かった」って話じゃないですか。
私が感情移入すべきは、子供時代のあなたなの?成人したあなたなの?
『スタンド・バイ・ミー』もこの『太陽の少年』も、現在の自分が語り部として出しゃばり過ぎ。
あと、この年上の女性に憧れる少年たちが意味もなく不良すぎ。
『ビー・バップ・ハイスクール』(85年)かと思った。思わねーよ。
ヒロインがだんだん中山美穂に見えてきた。いや、見えねーよ。
(2024.10.27 新宿シネマカリテにて鑑賞 ★★★☆☆)