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映画『ダイナマイトどんどん』 (ネタバレ感想文 )変化球の設定、直球の喜劇。
2005年以来の再鑑賞なんですが、いま観ると(前回鑑賞時も同じ感想を持ちましたが)、決勝戦とその後のハチャメチャが長いんですよね。
本当はその分減点なんだけど、こうしてたまに「観たい」と思い返すので、高評価にします。
岡本喜八、大好きなんですよ。
実は「日本映画専門チャンネル」で深作欣二『仁義なき戦い』シリーズを連続放映していて、初期シリーズ全5作を観た上で『ダイナマイトどんどん』を楽しもうと考えていました。
だって主演は文太だし、北大路欣也だし、金子信雄だから(笑)。
勝手に『仁義なき戦い』番外編扱い。
ところが録画したものの、『広島死闘篇』より先に進まない。観る気が起きない。正直、そんなに好きじゃないのかもしれない。たしかに俺、「仁義!仁義!」言うとりゃせんもんなあ。ニンキョー!
そういうわけで『仁義』シリーズは先送りにして、先に鑑賞。
この映画の「笑い」のジャンルは、パロディーというより「カリカチュア」だと思うんです。任侠映画の誇張。スポ根映画の誇張。
岡本喜八は「大まじめに喜劇を作ろうとした」と言っていたそうで、任侠やスポ根を笑い物にしたりバカにしたりは一切していないんです。
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宮下順子絡みの中盤のエピソードはびっくりするほど正統派任侠映画だし、田中邦衛のピッチングフォームはびっくりするほどマジな「漫画」です。
「照れ」から「逃げ」に走るコメディーが多い中、そんなもの微塵も無く、直球で喜劇を投げ込んでくる。
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アラカンの使い方やら金子信雄の使い方やら岸田森の使い方やら、喜劇のツボ、否、喜劇そのもの。だって、金子信雄がユニフォーム着てるだけで可笑しいもん。
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そして、岡本喜八の十八番というか、喜八らしさというか、フランキー堺絡みで「戦中派の恨み節」を投げ込んでくるんですね。
『仁義なき戦い』(1973年)でも書いたんですが、6歳年下の深作欣二とは少し感覚が異なっています。
出征した「ゴリゴリ戦中派」の岡本喜八は、ヤクザ映画ですら「戦争の悲哀」否「恨み節」を語るわけです。
しかし、終戦時15歳で出征しなかった自称「戦中派のしっぽ」深作欣二は、『仁義なき戦い』で「世の中を変えようともがく若者」という視点でヤクザ映画を捉えます。それはまるで当時の学生運動のようでもあります。
続けて観たら、こうした違いが見えて面白かった。
うん、まあ、仁義シリーズ、続けられてないんだけどね。
余談
「ナフタリンがプンプンするぞ」
「一生に一度の死装束、虫に喰わせるわけにゃいかねえ」
名台詞だと思うんですよねえ。使いたいな(<どこで?)
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(2022.04.10 CS録画にて鑑賞 ★★★★★)