映画『紅夢』 白いコン・リー、紅いコン・リー、黒いコン・リー(ネタバレ感想文)
張芸謀自身が監修したというHDレストア版を映画館で鑑賞。この作品は初鑑賞。
映画の時代設定は1920年代で、その当時の中国の情勢というものが私にはよく分かりません。
国家としては中華人民共和国以前の「中華民国」ですが、「清」の時代が終わってまだ10年ほど。劇中でしばしば口の端に上るこの家のしきたりと呼ばれるものは、清朝の時代からの伝統なのでしょう。
つまりこの映画で描かれているのは、清朝時代の残り香なのです。
ちなみに製作総指揮は、現在の中華民国=台湾の侯孝賢。
チャン・イーモウは後々娯楽作品も撮るようになりますが、初期作品は非常に作家性が強い。この映画も、とても「記号」的に感じます。
例えば、コン・リーの衣装の色は彼女の感情の「記号」として使用されています。
また、この家の主人。その顔はほとんど映されません。彼は一人の人間としてではなく、女性たちを支配する主という「記号」として描かれているのです。
あと、これは映画的な記号というよりも原作側のポイントですが、コン・リー演じる女性は大学生だったんですよね。
この時代、大学に行く女性って希少だったと思うんです。
おそらくそのプライドがいろいろ邪魔するんですよ。
そう考えると、「檻の中」で生きるしか術がない女たちの「生き様」映画なのでしょう。夫人たちばかりでなく、夫人に憧れる召使も含めて。
(2024.12.28 シネマート新宿にて鑑賞 ★★★★☆)