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映画『侍タイムスリッパー』 泣いた。感動巨編。マジで。(ネタバレ感想文)

監督:安田淳一/2023年 日(2024年8月17日公開)

映画の感想文に「泣いた」「号泣した」とかたまに書くんですが、たいがい再鑑賞で「好きすぎて」泣くパターン。『ゴッドファーザー』(1972年)とか『犬神家の一族』(76年)とか。
初見でこんなに泣いたのは何以来だろう?
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)以来じゃないかな?
あ、調べてみたら『日々ロック』(14年)と『音楽』(19年)で泣いてる。泣けて泣けてしかたなかったらしい。なんでそんな映画で泣いたんだ?

でも、共通する所があるように思うんです。
何か一つの事に「真摯」であるというか、その「愚直さ」に心動かされるものがあるんです。ある意味ロック。
私は黒澤明『白痴』(1951年)の系譜だと思ってるんですが、薄汚れた大人の心に、「真摯」で「愚直」な人間は眩しく映るんですよ。

あと、チャンバラの素晴らしさね。
『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)のガンアクションも同じなんですけど、生身のアクションの良さ。CGやAIで何でも作れちゃう時代ですから、逆に生身の良さが見直されているのかもしれません。
ブルーバックでのワイヤーアクションとか、手持ちカメラをぶん回して何が映っているか分からないアクションとかとは全然違う。
愚直に真摯にアクションの魅力をきちんと見せ(魅せ)ている。

どうやら「映画を撮りたい!」って想いは、チャンバラかゾンビに行き着くようで(笑)。チャンバラなら『サマーフィルムにのって』(20年)とか、ゾンビなら『桐島、部活やめるってよ』(12年)とか、当然『カメラを止めるな!』(17年)とか。
おそらく、チャンバラとゾンビは「フィクションの極北」なのでしょう。

で、単館上映から全国拡大上映へのヒットの過程として引き合いに出されるその『カメラを止めるな!』と本作ですが、ちょっとね、似た「危険な匂い」を感じちゃうんですよ。
もちろん『カメラを止めるな!』も大好きです。これも初見で泣いた映画でした。たしか、生意気なこと言ってた若手男優が駆けつけた時に涙腺崩壊したんですよ。その愛と熱意に涙したわけです。

つまり、その「愛と熱意」が危険でさ。
『カメ止め』も『さむタイ』も、映画製作現場の映画なんですよ。
劇中の役者やスタッフの情熱と、実際の映画製作スタッフ(監督)の情熱がリンクした結果が作品の質となって現れている。
チャンバラとゾンビは「フィクションの極北」と上述しましたが、実は両作とも「劇中と現場の情熱がリンクする」という「セミ・ドキュメンタリー要素」が背後に潜んでいる。
ほら、自分を題材にしたら一つくらい面白い小説が書けるって話もあるじゃないですか。それと似た感じ。
どこかで「自己を投影した情熱のセミ・ドキュメンタリー」を超えないと、言いたかないけど一発屋の危険が潜んでいる。
安田監督は私と同じ年齢のようなので、ぜひ頑張ってほしいもんです。

(2024.09.22 TOHOシネマズ日本橋にて鑑賞 ★★★★★)

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