行動分析学と心理主義的心理学
割引あり
人間を理解するためには「行動」をよく見ることが大切である。
今回の記事は、初学者向けに、行動分析学について解説するものである。
行動分析学の歴史
行動分析学の歴史は、1930年代に、アメリカの心理学者であるスキナーの研究に端を発する。スキナーは、「問題箱」の実験で有名なソーンダイクの「効果の法則」を発展させ、オペラント条件づけに着目し、動物の行動を研究した。
1900年代前半、心理学においては、ワトソンが提唱した「行動主義」と,その流れで、「新行動主義」が全盛であった。
スキナーは、ハル、トールマン、ガスリー、スペンスなどとともに「新行動主義者」として扱われていた。
しかし、スキナーの考え方は,ほかの行動主義者とは異なっていた。
ほかの行動主義者たちは、「心」と「行動」を分けた上で,「心」を研究対象から除外したり、「心」を研究するための手段として「行動」を考えていたのである。これに対して、スキナーは、「心」も「行動」も同じ体系で考えようとしていた。
行動を説明する3つの出来事
私たちは、3つの出来事に着目すれば、人間の行動の「理由」の大部分が説明できると言われている。
1. 生得的出来事
生得的なものを意味する。
例:怒りっぽい性格である。
2. 履歴的出来事
これまでの経験や行動の履歴を意味する。
例:今までの成績が良くなかった。
3. 現前的出来事
直前の状況やその場にあった状況を意味する。
例:深夜で周りに人がいなかったから、赤信号でも横断歩道を歩いた。
これらの3つの出来事は,「人間の内側にあって行動を制御するもの」ではなく、「人間の外側に存在するもの」である。
つまり、行動分析学では、環境と個人の相互作用で、人間の心の仕組みに迫る学問だといえる。
ちなみに、「環境」には、他者も含まれると考えられる。
心による行動の説明が好まれる理由
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