どっちつかずの緑
三十歳頃から服を断捨離しまくっている。
一時期、もう開き直って黒しか買わん! と思ったこともある。けっきょく、そこまで振り切れなかったけど。
クローゼットの中は無彩色が多い。無彩色というか、ほぼ黒。黒は良い。下着は透けないし、小物に何を合わせても大丈夫だし、ラフにしていてもそこそこキチンとして見える。最近は靴やカバンも黒いものをメインに使っている。迷いがなくて快適。
それでも人から言われるのは「ナカノさんって、緑好きだよね」。え、そう? 確かに定期入れもサイフも手帳も緑だし、よく着ているアウターも緑だ。そういや成人式に着た着物も緑系だったような……。
怖っ。
知らない間に緑に染まっていた。
いやまぁ、多少の自覚は無きにしも非ず。緑って、なんか色々ちょうどいいのだ。
緑のあの主張の無さというか、白でも黒でもないけどGLAYでもないあの感じとか。ものすごく乱暴な言い方をすれば、赤系は情熱的で女な感じ、青系は知的で男な感じ。緑はそのどちらでもない。
緑は「私は○○」なんてものに一番遠い色だと思う。
戦隊ものでも影が薄いと揶揄された、あの感じだ。彩度高めの、色として強めの緑にしても「○○」を感じさせることは無いのではないだろうか。
強い色でありつつも、人から「何」と思わせることがない色。
身につけるなら私は黒を一番に選ぶけど、色としては推せる。
実際、人に言われるほど緑色が集まっているわけで、名実ともに私の推し色なのかもしれない。
だけど私の周りに緑が集まってしまった理由は、たぶん別のところにある。
私が青だと思っていたものは「緑」と言われたし、私が黄色だと思っていたものも「緑」だと言われた。
え、これ緑なんですか?
ってことが、多すぎる。
緑はどっちつかずのことが多い。私が良いな、と思う色と色にまたがって混ざり合って、何とも言えない素敵な色を出してくる。ずるいなぁ。そんなの、思わず手に取っちゃうし集めてしまうよ。
前は割と素直に好きって言えたのに、なんだか最近は言えない。良いなって思えることが多すぎてちょっと悔しいのだ。先日も緑系のペンをまた買いそうになって、ワインレッドのペンに変えた。緑とぜったいに混ざり合わなさそうなところがいい。
ワインレッドのペンよ、私のノートに革命を起こしてくれ。
そんな思いの帰り道、見上げた桜並木はもうすっかり葉がしげっていて。ぴかぴか、輪郭が輝くような緑が心地良くて、間抜けにも私は深呼吸をしてしまうのだった。
※白でも黒でもないGLAY……九十年代にメジャーデビューしたバンド『GLAY』の由来(諸説あり)。しびれる。
☆ペーパーウェル08 テーマ「緑」参加エッセイ。
小説、エッセイ、イラスト、短歌なんでもOK(1次創作)!という楽しいイベント。
最初は小説にしようと思ってましたが、ディストピア感ある緑しか出てこなかった(しかも折本のボリュームじゃない)ので、エッセイで参加させていただきました。
色んな人が色んな緑を出してくるのでおもしろい。