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看板ねこ

この店に住み始めた時は雨の日だった
親に逸れて泣きながら水溜りを避けて植木鉢の陰に
何も暖かさを感じなかった時に
見知らぬ両手に抱えられた

5匹の兄弟と母との時間を過ごしたのは
目が見えて少しの時間
暖かい体温に囲まれて
このまま続くと思ってた

近所のオス猫に住処を追われて
見知らぬ道を幾つも曲がった
この店の手前で気がついたら迷子に
何度も鳴いて呼ぶのだけど
車の通る音に消されて一人になった

街灯に雨が写り始めた頃
スニーカーを履いた人が気がついた
「何か声がする」
シクラメンの香りに誘われて
小さくうずくまる僕を見つけてくれた

その時から僕はこのお店の住人になった
天気が良い日は
このテーブルがお気に入りなのだ
いつか逸れた兄弟と出会えるように

僕は看板ねこ
まだまだ新米
でも優しい店主と暮らしている



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