令和6年 司法試験予備試験 論文再現答案 刑事訴訟法 評価A

 就活が忙しい今日この頃、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 刑事訴訟法については設問1はみんなできる。設問2はみんなよくわからん、というのが現場だったと思います。ただ、設問1もちゃんと書けない人もいたでしょうから、それだけで合格点は行けたかな、と。設問2は現場思考だったという印象です。A評価だったのは意外でした。

 あまり勉強段階で本番のレベル感を知る必要はありません。例えば、再現答案を見るなら、A答案だけでいいと思います、「オールCなら受かるからCの答案くらいでいいんだ」という気持ちで勉強するのは悪手(将棋用語)でしょう。

 あえて言うのであれば本番は途中答案めちゃくちゃ多い、という事実です。私は途中答案をしませんでしたが、他の人の答案が回収されていくのを見ていたら裏面空白の人がやたら多かったですね。大半と言えるくらいに。
 そのため、まず途中答案をなくす、という課題を試験までにクリアしていけば合格の確度はぐっと上がると予測します。

 以下、再現答案です。

第1設問1
1事件②において、事件①で甲が犯人であることを推認する資料として用いることはできるか。
2まず、全く関係ない前の犯罪事実や前科(以下、前科等)は自然的関連性が否定されるところ、本件では、どちらも強盗罪の罪責であり、日にちも同一である等の事情から、最低限度の証明力は認められるので、自然的関連性は肯定される。
3しかし、前科等は犯罪事実の推認のために用いることはできないと考えられる。なぜなら、前科等は被告人の犯罪性向といった実証的根拠に乏しい人格的評価によって、誤った事実認定を導く恐れがあり、それを避けて推認力を合理的な範囲にとどめようとすると当事者は前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じ、争点が拡散する恐れがある。
 よって、そのような危険を避けるため、原則として前科等は推認のための資料として用いることはできない。
 しかし、前科等の法律的関連性が否定されるのは、上記危険を避けるための政策的理由である。そうすると、実証的根拠の乏しい人格的評価によって事実認定を誤る恐れがないのであれば、証拠として用いることは何ら問題がない。
 そこで、例えば、善性格の立証、同種手口等による被告人と犯人の同一性の推認、客観面が立証がされた場合の主観面の立証等では上記恐れが類型的に低く、証拠として用いることが可能である。
4そこで、本事例では、車を衝突させてその後声をかけて財物を盗るという同種手口なので、許されるかと思える。しかし、上記危険を回避するためには許容される場合も限定して解すべきである。具体的には、①その前科等に係る事実が顕著な特徴を備えており、②それが本件と相当程度類似していることが必要であると解する。
 本件では、事件①は夜に交通量が少ない民家が立ち並ぶ住居において行っており、その手段はまず、黒色の軽自動車を被害者にあてて、被害者が転んでから、声をかけ隙を見てバックを盗るというものであった。これについて、強盗を行うのであれば夜間の人通りが少ない場所で行おうとするのが、通常であるし、また、黒い刑事自動車自体も珍しいものではなく、よく流通している種類の車であるといえる。よって、①顕著な特徴を備えている、とは言えない。加えて、事件②では声をかけてその後すぐにバックを手に取っているが、事件①では声をかけた後、被害者の顔面を1回こぶしで殴っており、②類似性も高くないといえる。
 以上のことから、本件では、上記危険があるので、証拠とすることは認められない。
 
第2 設問2
 1本件では、設問1と異なり、甲が犯人性は争わず、金品奪取の目的を否認している。そこで、甲が同目的を有していたかを推認するために事件①を用いることができるかを検討する。
 2上記のとおり、要証事実に対する最低限度の証明力を備えることは明らかであり、自然的関連性は認められる。
 3次に法律的関連性について、事件②においてBとXはBにぶつかった黒い軽自動車のナンバーを認識できていないが、その車が甲の者であることが判明したのは事件①においてAがナンバーを覚えていたからである。そして、事件②で甲は犯人性について争っておらず、自動車を追突させたのは甲であることは基本的に明らかである。
 そうすると、事件①の犯人甲が人通りの少ない夜間の住宅街で同じ日に背後から歩行者に車をぶつけ、声をかけてからバックを盗んだという事実から、事件②でも甲が背後から同じ車をぶつけて手をバックにかけたことを併せ考えると、甲はそれを盗る意思があったことが推認できる。そして、このような推認過程をたどれば上記実証的根拠に乏しい人格的評価につながる恐れがない。よって、甲の強盗目的を推認するための道具として用いることは可能である。
 加えて、主観面の立証は極めて困難であることを考慮する必要がある。
4以上のことから、甲が金品奪取の目的を有していたことを推認する資料として用いることは可能であると解する。
                                          以上。

 どうなんだろ。予備校等の模範解答を確認したうえで、A評価はこの程度か、という軽い気持ちで見てくださいね。

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