
フンコロガシの話
古代エジプトの太陽神ケプリの顔はフンコロガシである。神の顔が、動物の糞を食する甲虫なのである。転がす糞が太陽の運行を意味しているのだ。
地面に埋められた糞球の中で卵が幼虫になり、そして成虫に変わって再び地面から飛び出してくる。その様子が死からの再生を意味する象徴となったらしい。
成虫に化したときの糞球はとても固く、踏んづけても壊れない。雨水やナイル川の氾濫などによって水に触れることで柔らかくなり、成虫たちはいっせいに地面からあふれ出てくる。
太陽神ケプリのフンコロガシの正式名はスカラベ・サクレである。スカラベ・サクレを観察して有名なのは、『ファーブル昆虫記』を書いたジャン・アンリ・ファーブルが挙げられる。
ファーブルは本の中で一番最初に、このスカラベ・サクレを書いている。糞虫の体の特徴や糞球を転がす様子、仲間に横取りされたり、卵をどこに産み付けるかなど細かく観察をしている。だが、実際に観察したのはスカラベ・サクレではなかった。ティフォンタマオシコガネという別種であった。
両種はよく似ているが、サクレは夜行性で、ティフォンは昼行性である。フンコロガシの種類によっては、昼と夜で活動が異なるのである。
アフリカの砂漠地に行けば、昼に熱砂の上で糞球を転がすフンコロガシに出くわすかもしれない。それがティフォンである。そして、夕方から暗くなって姿を現すのがサクレである。
ティフォンは、なぜ日中の暑い時間に活動をするのだろうか。おそらくだが、暗くなって糞球を転がしていると、他の種類に横取りされてしまうのだろう。フンコロガシの競争は激しいのだ。夜の競争に勝てなかったフンコロガシたちは、昼間の暑い時に適応するよう進化をしてきたに違いない。
そして、昼を選んだフンコロガシたちが暑さにまいると、転がしていた糞球の上で休む。水分を含んでいるので、とても涼しいのだ。
フンコロガシの昼行性は太陽を見上げ、夜行性は月を見上げて球を転がす。そして、仲間たちにとられないように、ひたすら球を転がしていく。
(参考)
「フンコロガシはなぜ空を見ながら糞を転がすのか」National Geographic
CC 表示-継承 4.0File:Khepri.svg 作成: 2007年12月27日
[Beetles use dung balls to stay cool] by Wits University
いいなと思ったら応援しよう!
