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7月第2週放送(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋

先生、予習範囲が広いです…!

毎週金曜日の夜、豊島先生がTwitterに降臨され、今週の講座の予習範囲を告知してくださる。
多忙極まりない中での、まめなお気遣いにとても嬉しくなってしまうが、こちらが恐縮してしまいそうだ。
さて今週は「p16~20を重点的に」との事。テキストを開くと、ほぼ全ページだった。豊島先生、私のなけなしの脳のキャパではこれを噛み砕くのに半日はかかってしまうのです、と自分の棋力をうらめしく思いながら、お言葉に甘えて“気楽に”視聴する勢に仲間入りさせて頂くことにした。

何やら物騒な「位の奪還を目指す反撃」

綺麗な丸みをおびた豊島先生の後頭部。たくさん脳が詰まってるんだろうなと余計な所にばかりつい目がいってしまう。
初回放送での若干のぎこちなさはもう無く、カメラ目線でにこやかに話される。
内容は先週(7月第1週)で取り上げた畠山成幸八段との対局の続きからだった。先週は実戦から離れ、飛角銀桂を駆使した理想的な攻めの構図の解説だったが、実際にはなかなかそんな風に理想形には組ませてもらえないので、と苦笑する豊島先生。
先生レベルでさえそうなのであれば、全くやるつもりのない戦型になってしまい、振り飛車でも居飛車でもないただの根性見せ将棋になってしまう私としてはとても安心する。

今週のテーマは「位の奪還を目指す反撃」だが、文字面だけ見るとずいぶん勇ましい。さながら奪われた誇りと自由を取り戻す独立戦争のスローガンのようだ。
なんてことはなく、将棋でいう所の「位」は1段目から9段目の中間地点が5段目なので、ここを境に攻撃陣が敵陣へと繰り出していけることから、5段目のポジション取りに成功することを位を取る、と表現している。
☖4五歩で奪われた4筋の位を☗4六歩で取り返そうとしたら、手抜いて☖4六角と来られた。延長線上には飛車にも睨みをきかせており、イヤな拠点だ。ここでは「戦いの起こった筋に飛車を回る」のセオリー通りに4筋を目がけて飛車をすべらせる。

☗4六歩→☖6四角→☗4八飛と援軍を出動させる

☖4六歩の次の一手が今週のパーフェクトな一手だった。4六の地点だけを見ると相手が利き1枚でこちらは飛銀角と3枚利いている。☗4六銀で取ってもよさそうに思えるが、ここでは☗4六角が正解だ。
先週の放送でも取り上げた☖6四角は、先手の飛車や香車をロックオンする好位置なので、うかつに他の駒を動かすと取られてしまう。この場合☗4六銀が動いた瞬間に香車を失い、駒損してしまうので気をつけたい。

まずは☖4六角を除去することを最優先にして角をぶつける

角交換の後は、持ち駒の角を打ち込まれて両取りをかけられない為に、飛車の行き先は慎重に決める。放送では☖4七歩から☖4八と金、と成られた時に、と金が自由に戻れないように☗2七飛と浮いておく手順が解説された。
確かに、これだとと金を作ったのに7段目には動けず自由度が低くなる。
プロの1手には漫然と、なんとなく、は無く、計算し尽くされているのだと改めて感心した。

☗4五の地点を取れればかなり好調と思ってOK

豊島先生が仰るには☗4五の拠点(後手からは☖6五)は矢倉囲いの急所で、ここの位を奪還できれば例えば桂馬や香車が手に入ればすぐに4四に併せて使うことで攻めていけるそうだ。戦いでいえば天王山をどちらが占有するかといったところだろうか。
美濃囲いの5五角+3六桂のように、急所を守る(攻める)意識があるだけで全然違ってきそうだ。駒損をしない、数の攻めを考える、何も考えずにボケっと4五の位を取られない、をこれから心に刻んでおきたい。

お悩み相談室「負けてあげることが大事」

小学生のお子さんと将棋講座を観ているという親御さんから、初めて息子と対局した時に連続で負かして大泣きされ、親子で対局してくれなくなった。小学生と指すときはどんなことに気をつけたらいいですかというお悩みのお便りが紹介された。
この悩みを聞いた豊島先生はすごくよくわかる、といった表情でニコニコとしながら、最初は負けてあげることが大切です、との事。
豊島先生ご自身は親から教わったものの、ルールを知ってるぐらいの初心者だったのが逆によかったのかもしれないと仰り、同世代と指して勝つようになりちょっと調子に乗ってきたら⁈その時は1回勝つぐらいにしておくのがよいというアドバイスだった。

接待ゴルフならぬ接待将棋なんて言葉があったら、プロの先生は俳優も真っ青な名演技で、抜群のコントロールで緩急自在に指し回し、勝たせてもらった事にさえ気づかせないだろう。

この話を聞いて、昨年行われた桐山清澄先生の引退慰労会での矢倉規広七段の言葉を思い出した。
矢倉先生も豊島先生同様、奨励会員の頃にプロになるまでの間、桐山先生に教わっていて、たまに勝つことがあったそうだ。
トップ棋士に勝てたことに気をよくし、大いに自信をつけた矢倉先生だったが、プロになってみて気づいたのは、好きに指させてもらえて、緩めてもらっていたのだと。私の好きな心温まる師弟エピソードのひとつだ。

自信を持つことが子どものやる気につながるのだろう。桐山先生の教えが矢倉先生や豊島先生に受け継がれているのはとても素敵で、こうして次の世代が立派に成長していくのだ。
クリスマスイブの夜、子どもたちに気づかれないように寝静まったのを見計らってそっとプレゼントを置くパパママのように、夢を見させてもらった幸せな経験があったぶんだけ、人に同じように優しく振る舞えるのかもしれない。

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