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ゲームで変わる世界①〜Webの未来とゲーミフィケーション〜
今から近くはないけれど、遠くもない未来のお話。
こんにちは、ペンシルです✍️
ペンシルの研究開発部門であるヒューマナライズマーケティング研究室の高木と申します。 主に心理学の分野を研究しており、その知見をもとに分析業務をおこなっています。
以前にはこんな記事も書いてます。
さて、今回は『 「ゼロパーティデータ」はデータ活用のみちしるべとなりうるか 』の続き、「Webの未来」についてお話させていただきます。
ひとことに未来といっても、その可能性は何通りにも分岐します。今回はその可能性の一つ「世界がゲームになる未来」について触れます。
「世界がゲーム」と聞くとファンタジーやフィクション、夢物語だと思った方もいらっしゃると思いますが実はそうでもないのです。むしろ、世界をゲームにしていくのは、この記事を読んでいただいているみなさんかもしれません。
1つのIDでサービスがつながる世界
ここ数年、モノからコトの時代へ!その先はトキ消費だ!なんていわれております。
しかし…モノはハッキリわかるけれど、コトとかトキといわれても…コトとトキってなにが違うの…?と、ピンと来ない方も多いのではないのでしょうか?
コトもトキも、もちろんモノも、シンプルにいってしまえばすべて「体験」です。モノやコトが溢れかえっている現代。しかしトキは限られています。ではその限られたトキの中で、ユーザーに選ばれるためにモノやコトだけでない価値の差別化が必須なのです。
つまり、モノやコトをただ提供するだけではユーザーの満足度や幸福度に大きなインパクトは残せない。そういう時代に突入したことを意味しています。
さて、ただサービスを提供するだけでは満足してもらえないとなれば、我々はどうユーザーにサービスを届ければよいのでしょう?
それが「体験」を通した「ストーリー」の提供です。この「ストーリー」こそが価値となるのです。
自社が提供する商品から得られる体験をどうやったら加速させられるか、どうすれば簡単に体験してもらえるかを考えサービスを展開、アップデートし続けていく必要があります。
動画がみたいのであってディスクが欲しいわけではないように、得られる結果が生活に溶け込み、ユーザーが歩む「ストーリー」の一部となる。そういったサービスが求められているのです。
そのためには、ユーザーへのメッセージも、モノやコト自体の効果を全面に推し出すのではなく、「体験」や「ストーリー」を連想してもらうメッセージへと変化させていかなければなりません。
つまり、結果やその過程をいかに楽しんでもらえるかに視点を合わせればよいのです。(もちろん一部のコレクターの方や、商品そのものが好きな方もいらっしゃるとは思います。パッケージやデザインに手を抜いていいというわけではありません。パッケージやデザインもわくわくしてもらったり、衝撃を与えたりとそれもまた「体験」の一つです)
例えば、Amazonさんは、ショッピング、動画、音楽など様々なサービスを展開しています。これらはひとつのアカウントで複数のサービスをつなげ、連携させることで「あらゆる体験へのアクセスを簡単でシンプルにし体験しつづけてもらう」という目的を読み取ることができます。
各々のサービスが繋がり、生活に溶け込むことでユーザーの「ストーリー」の一部となりえています。Amazonさんが世界的にも支持されていることからもわかるように生活や体験に目が向けられ始めています。国際的には「SDGs」の採択や「D2C」の流行は、この傾向の追い風にもなるでしょう。
その過程、あるいは先に訪れる未来として「ひとつのIDであらゆるサービスがつながる世界」があると考えています。
ユーザーが持つひとつのIDで、あらゆる企業や個人が提供するサービスを連携することができれば、面倒な登録を省き、簡単でシンプルにユーザーが自ら自分の生活をカスタマイズすることができます。ユーザーが体験を自ら選び、体験の提供者はユーザーに合わせてサービスをアップデートし続けていく。そんな未来に私たちは歩み始めているのではないでしょうか。
さらに、IDでサービスがつながっているわけですから例えば、下図のような体験が可能となるのです。
また、サービスが連携しているためレコメンドの精度も上がっていきます。
ゲーミフィケーションのすすめ
そんな世界になったとき、どうすればユーザーに楽しんでもらえる体験を提供することができるでしょうか?
私が推奨するのは「ゲーミフィケーション」です。
「なんだ、またゲーミフィケーションかよ」と思われる方もいらっしゃると思います。というのも、過去に何度か「マーケティングにゲーミフィケーションを取り入れよう!」という考え方が流行ったことがあります。私の感覚ではあまり好ましい成果が上がったようには思えません。
しかし、今こそゲーミフィケーションなのです。その理由を紐解くために、なぜ今までのゲーミフィケーションが好ましい成果を上げることができなかったのかについて、私の考察をご説明します。
◆なぜ、過去のゲーミフィケーションは失敗に終わったのか
結論から言うと「ゲームになってなかったから」のひとことにつきます。
今までゲーミフィケーションの取り組みは確かに行われてきました。しかし、そのどれもが中途半端だったように思えます。なぜ中途半端かというと「要素を断片的にかつ単発でしか導入していない」からです。
どんなミニゲームであっても実際のゲームにはある程度のストーリー(流れ)があり、様々な要素が組み合わさっています。ゲームの要素ではなくそのストーリーや組み合わせこそがゲームをゲーム足らしめているのです。
例えばタイムアタック。よくゲーミフィケーションの例としても挙げられ、導入される要素ではあります。確かに、始めのうちは楽しいと感じる人もいるでしょう。しかし、単にタイムアタックを導入しただけでは、報酬もなくフィードバックもない、なにかが失われるわけでもなければ目的もない。そうなると段々マンネリ化していき、飽きていきます。
人間の興味やモチベーションの鍵は「新規性」「前に進んでいる感」です。タイムアタックだけでは、最初はこれらが感じられるかもしれませんがタイムアタックが「通常」になってしまったとき効果がなくなってしまいます。
さらに飽きてくると、タイムアタックというゲーム感覚で楽しんでもらうために導入した要素が、プレッシャーとストレスになってしまいます。こうして、成果も上げられないまま、失敗に終わるのです。
◆重要なのはストーリー性+ゲーム要素
プロダクトファーストだった時代、仕事としては目の前の作業をこなせばよかった時代だった頃ですからそんな単発的な導入のされ方をされていても仕方ありません。
しかし、今はプロダクトファーストではなくカスタマーファーストの時代、そして、体験を、ストーリーを提供する時代。仕事としては目の前の作業をこなすのではなく、流動的な頭脳労働の時代です。
必然的にストーリーや繋がり、流れが発生する現代こそゲーミフィケーションが真価を発揮するのです。
つまり、ストーリー性を念頭に置いたゲームの要素の組み合わせこそがゲーミフィケーション成功の鍵なのです。
◆今こそゲーミフィケーション
これからの時代、我々マーケターや企業、組織のリーダーはユーザーや社員の日々のストーリーをデザインすること。つまり、日々を楽しく生き生きとゲームのように過ごしてもらえる社会を実現することが求められています。
そうして、この考え方が浸透したとき世界はゲーム化するのです。
世界がゲームになる。しかもゲーム化するのは私たち自身かもしれない。そんなわくわくする未来が近づいてきています。
次回は今回の続き「ゲームで変わる世界②〜ゲーミフィケーションとゼロパーティ〜」という記事でお会いしましょう。
お読みいただきありがとうございました。
▼3/8追記:続きの記事を投稿しました!こちらからお読みください▼