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【読書感想文】ディケンズ 「デイヴィッド•コパーフィールド」
デイヴィッド•コパーフィールドをようやく読み終えました。新潮文庫版で全4巻、いやあ‥長かった。そして、面白かった。
ディケンズは「大いなる遺産」や「クリスマス•キャロル」を前に読んでいて、それらもとても面白かったです。
ディケンズが一番好きと言っていた作品がデイヴィッド•コパーフィールドで、いつか読みたいと思いながらその長さのためにためらっていたのでした。
でも去年の一時帰国の時に思い切って全4巻買ってアメリカに戻ったのです。たぶんフライトが長すぎて自分にずいぶん時間があるように錯覚していたからな気がします。
あらすじ
主人公デイヴィッド•コパーフィールドの人生の回想録の物語です。作者ディケンズの自伝のような部分もあると聞いています。
父親はなく、幼い頃は母親とお手伝いさんと幸せに暮らしていたデイヴィッドでしたが、母親の再婚を機にその時間は終わります。
新しく父親になった男と、その姉がデイヴィッドの家を支配し、彼らに虐げられながら生活することに。母親も彼らを恐れ、その生活の中で衰弱して亡くなってしまいます。
デイヴィッドは彼らに家から出されて、校長が生徒に鞭を振るような学校に入れられます。そして母の死後には学校も退学することなり、わずか10歳にして教育の機会を失い、下働きに出されます。
周りの貧しい出自の子供たちと共に働く日々。デイヴィッドはここでの暮らしと将来への希望のなさに落ち込みます。
そしてある日、母親から話で聞いたことがあるだけの伯母を頼ることを思いついたデイヴィッドは、ついに逃げ出すことを決断します。
一文無しで伯母がいるであろう遠く離れた街に歩いて行きます。そしてボロボロで辿り着き、なんとか出会えたその伯母は、デイヴィッドを引き取ることを決めてくれるのです。
この伯母の登場がデイヴィッドの人生を好転させてくれます。良い学校に入れてくれて教育の機会を取り戻し、卒業すれば就職も世話を焼いてくれました。
しばらくは法律事務所の見習いをするデイヴィッドですが、努力して速記術を身につけて議会の記者になり、その間に発表した作品により小説家としても名を上げていきます。
デイヴィッドがどん底から身を立てていく中、彼と出会ったたくさんの人々が描かれます。初めの学校で出会った2人の友人、母と共に育ててくれたお手伝いさんと海辺の街で暮らすその家族、下宿先で出会った人々、就職先の法律事務所の周りの人々。
とにかくたくさんの登場人物が出てくるこの物語ですが、すべての人物が個性的で、彼らとデイヴィッドに起こる事件(結婚や別れなど含めて)の数々がこの作品を読んで一番面白いところだと思います。なので、ここでは書かずにおきます。
作品を読んでみて
デイヴィッドは困難や逆境を乗り越えて、最後は経済的にも成功し、愛する妻と子供達と幸せに暮らすことになります。
彼の物語から、なにか人生にまつわる重要な要素を読み取れるか考えてみました。
行動力
会ったこともない伯母を頼って1人で下働きの環境から飛び出した行動力は彼の人生を変えた大きな要素だと思いました。
同じ環境にいる貧しい人々に染まらず、自分はこんなはずではないという誇り高さが良い方に出たのではと感じました。環境
伯母のおかげで環境がガラリと変わり、教育や仕事の機会に恵まれます。また彼女は彼の良き指導者、理解者でもありました(強くて人間味があり、僕はとても好きなキャラクターです)。
もし継父との関係が続いていれば、全く違った人間(能力も人格も)に育っていたのだろうなと思うと、伯母の登場は彼の人生の最大の転機だったと思います。努力•勤勉
デイヴィッドは忙しい日々の中でも時間を工面し、難しい速記技術を手に入れて、議会記者の仕事を得ます。
努力•勤勉が必要なスキルや知識が多くの他人との差別化になり、チャンスを与えてくれるのだなと感じました。才能
デイヴィッドは文才が認められて小説家として名を上げていきます。そして経済的な成功は小説家としての成功によりもたらされます。
よく、文才がある人を羨ましく思います。それはやはり個人の才能と努力で仕事の成果が出せるからです。
他の仕事もそうじゃないか、と思われそうですが、少なくともサラリーマンはそうではないと思います。
個人の能力で食べていけるということが、組織やしがらみからより自由にしてくれるので、羨ましく思います。
また、この物語は勧善懲悪的な展開もあり、悪巧みを働いた登場人物には最終的には失敗や不幸が待っています。
そして善き人として描かれる人物は大抵はハッピーエンドで、彼らのファンである僕たち読者を喜ばせてくれます。少し展開が安易だとか、ご都合主義だとか思う人もいるかもしれませんが‥
(そんな中で、ハムという作中でも指折りの好人物の運命には心が痛みました。)
長い作品ですが、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。