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本 十牛図入門(つづき10)
十牛図入門 横山紘一著
たまたまなのかもしれませんが、私が手に取った、十牛図に関する本は、どちらも、過去に人生に追い詰められた人が書いた本でした。
人生につまずいたら、人生が深くなる、なんておもっていたころの私、なにもわかってなかったのだと今、思います。
そう、つまづいたら、たとえば、ものすごく深い悩みとか、どうにもならない病気とか、たぶん私は乗り越えられるなんて思っているうちは、たぶん自分はまだ、元気だったのだと思います。
でも、こんな状況になっても、生きていかなくちゃならない、と気づいたとき、ほんとうに深い淵が目の前に広がっていたりすることがあります。
淵に落ちかけてしまったら、回りの人がたすけの手をさしのべてくれるけど、手が届かないあんな感じです。
十牛図は、たぶん禅の呼吸は、なにかそんな人を淵から助け出してくれるのでしょうか。
最後の十章、十図は「入鄽垂手」人が行き交う町の中で生きるとはなにか。
この絵のテーマは、「他者救済」です。社会貢献ともかかれています。
いつも、坐禅のあとに唱える坐禅和讃からひかれています。
白隠禅師の「坐禅和讃」の中に「一坐の功を為す人は積し無量の罪ほろぶ」という言葉があります。わずか三十分、息になりきって坐るだけでも、心の中の無量の汚れがなくなっていくというのです。
自分を放棄して、他者のために生きるのは難しいです。
でも、その生き方に幸福がある。
ちいさなことでも、なにか役にたつことができる。
じぶんを0にして、ひとのために生きてみる。
それがこの十牛図、人生の頂点と書かれています。