Take-27:映画『キングスマン(2014)』は面白かったのか?──ダメな映画を盛り上げるために…?──
【映画のキャッチコピー】
『表の顔は高級テーラー
しかしその実態は、世界最強のスパイ機関「キングスマン」!』
【作品の舞台・ロケ地】
高級テイラー「キングスマン」のモデルになったのは、ロンドンの有名テイラーが立ち並ぶストリート、サヴィル・ロウで1849年から店を構える「ハンツマン(HUNTSMAN)」。
主人公エグジーたちが仲間たちとたむろするパブ「Black Prince」も近くにありますね。
また、エグジーの住む集合住宅はスイスのコテージ駅近くで撮影。治安が悪く見えるが実は高級住宅街ということです。
【原題】
『Kingsman: The Secret Service』
【上映時間】129分
♪ダメな~映画を盛り上~げるために~たくさんの命が捨てられていく~♪
🎤♪( ´θ`)
── なんてな歌がありました。
おかげで人がたくさん死んでしまう映画を観るたびにこのフレーズを思い出し、その都度「あ、これ、ダメな映画なんだな」などと一瞬頭をよぎってしまうようになっちゃったじゃないスか。どうしてくれるんです、桜〇さん……(-_-;)
皆様よき映画ライフをお過ごしでしょうか?
N市をねぐらとする𓃠野良猫、ペイザンヌです。
そんな感じで「いや〜、ずいぶん死んだな今回はしかし 」というのが今回チョイスした『キングスマン』。
監督は『キック・アス(2010・2013)』シリーズ、そして現在公開中『ARGYLLE/アーガイル(2024)』の監督、マシュー・ヴォーンですやね。こちらも公開当日、さっそく観てまいりましたが……X(旧Twitter)の方には既に感想を上げておりますので、宜しかったらお立ち寄りくださいませ。
今回は『キングスマン』パート1の方に重点を置かせてもらいます。
さて、ミス〇ルが歌ったようにこの映画が果たしてダメな映画なのかというとまた違うような気もするし、イヤ、しかしいくらなんでもこりゃヤリ過ぎじゃね〜か? トカ思っている自分もどこかにおります。
この映画はR15指定なのですが……それがナゼなのかがよくわかったというか。
理由として『刺激の強い銃器、刀剣による殺傷、肉体損壊の描写がみられる』ということなのですが、いや~、まあ凄い。しかもその動きが派手であり、そしてカッコヨク、けれどとても残酷で、しかもラスト近くは人が死ぬことで思わず笑ってしまうような演出もあったりするから、こりゃ仕方もないわけで。
ぶっちゃけ言うとこの映画には(ある理由により)人間同士が50人くらいで殺し合う映像が延々続く場面があります。しかもそれが銃撃戦などでドンドンドドドンってわけじゃなく…… ええ、そんなヤワな映像でなく………… 自粛……
(´д`|||)
なんでしょーかね、この気持ちは、しかし。怪物やエイリアンに人間が殺されたり食われたりするのを見せつけられるのであれば「まあ、しゃあないわな、だって相手モンスターやもんな…… 」みたいな諦めの境地にも至れるわけですが、人間同士でこうもズバズバガツガツやられると脳内モードに妙な危険信号が放たれるわけですよ。
で、結局どうなん? おもろいんかい、おもろくないんかい? と、問われると、やはり……
「めっさ、おもろかったですわ!w」
と答えるしかなく…… ( ̄▽ ̄;)
“よほど自信がないと、もしくは007のようにブランドがないと、スパイ映画ってシリアスに作ってはいけないんちゃうか?(理由としてはなんか興行的にコケそう・なんか疲れる・なんか類似品か多すぎて記憶に残らない)”という私めの持論をオールクリアー。見事な匙加減でありました。
まあ、まず骨組みがしっかりしてますからね。ひねた不良でしかなかった主人公タロン・エジャトンが“キングスマン”への試験を通し、成長していく過程。
彼を導く師匠コリン・ファースの信念に基づいたカッコヨサ。
そして悪役《サミュエル・L・ジャクソン》のキャラクター。さらには彼の手下である女殺し屋ガゼルもいい味出してました。左右の義足そのものが鋭い刃のついた武器となっており、まるで知る人ぞ知るカルト漫画『殺し屋1《イチ》』を彷彿させる蹴りのアクションを見せてくれます。(映画版は2001年に制作されておりカルトな人気を得てますが、ボクは血がドバドバ出るのは苦手なので未見です。浅野忠信さんらが出てますね)
そんなエグいバトルをビビりながら見ているルークスカイウォーカーが……って──おわっ! !
(゜ロ゜ノ)ノ
……マーク・ハミルさんじゃあーりませんか。あなたも出てらしたのね! 何してんのあーた、こんなとこで!w
そこにはジェダイ・マスターとしての貫禄はこれっぽっちもありませんでした。ちょうどこの時期『スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)』の撮影と重なってるみたいですが、あまりにも出番が少なかったんで暇だったんすかね? まあ、こちら『キングスマン』でも出番的には友情出演くらいの扱いでしたけど
そうなんです、こんな感じで悔しいことに王道の面白さ+奇抜なアイデア&キャラがこれでもかと詰め込まれてるんですよ、この映画。
『キングスマン』以前には『アベンジャーズ(1998)』という映画もありました。あ、アイアン・マンやらキャプテン・アメリカのMCUではないですよ、別物です。1960年の英スパイドラマ『おしゃれ(秘)探偵』のリメイク映画です。
「ビシッとスーツを着こなした英国紳士が傘を使って闘う」というとコレをナゼか思い出しましたね。
この『アベンジャーズ』という映画、主演は後に『キングスマン/ファースト・エージェント(2021)』の主役を張ることとなるレイフ・ファインズというのも因果を感じます。敵役に007のショーン・コネリー、そしてヒロインには『キル・ビル(2003)』のユマ・サーマンが出演してるのですが、どうにも盛り上がりにかけず……。
『キングスマン』も最初……「うーん、またそんなんちゃうかな」……というイメージがあって手が伸びなかったんですが、いやいやどうして、あの時のフラストレーションを見事解消してくれましたね。うん。
本作『キングスマン』で、闘っているシーンの演出あるじゃないですか。急にガッとスピーディーな動きになったかと思えばヒューンとスローになったり……っていうあの動き。最近いろんな映画でホント見かけるようになったなぁと。いや、カッコイイんだけどね。
この動き、一見『マトリックス(1999)』辺りから始まったように思えるけど、それを完成させ、定着させたのはガイ・リッチー監督の『Snatch-スナッチ(2000)』辺りからだったんじゃないかなと信じている方であります。
同監督の『シャーロック・ホームズ(2011)』でもホームズがボクシングをするシーンでカッコヨク使われてましたやね。
まあ、ボクなどはCGも使わずブルース・ウィリスあたりがヨタヨタになりながら泥臭く闘ってるのを見てる方が性に合ってたりもするんですがw
で、問題の教会での残酷シーンなんですが、見終わった後、妙に違和感が残るんですよ。これはナゼなんやろ? と少し考えてみたところこの『キングスマン』という映画が完全エンタメだからなんだろな、と。
人が人を残酷に殺す場面を扱った映画はこれまでいくらでもありました。
ホラー映画は当然のことながら、北野武監督が多大に影響を受けたであろあサム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ(1969)』やダスティン・ホフマン主演の『わらの犬(1972)』、メキシコ映画の『エル=トポ(1970)』といった無駄に、というか、過剰に血がダバダバ流れる映画です。カルト寄りになるんですかね、ただ、それらはどれだけ血しぶきが飛ぼうと笑うことはなかったはずなんです。
『キングスマン』の4年前には、ジュード・ロウ主演の 『レポゼッション・メン(2010)』なんて映画もこの映画に先駆けるようゆラストにエグいシーンがあった気がします。高価な人工臓器のローン返済ができなくなった客から“臓器”を冷徹非情に無理矢理回収するレポ=マンと呼ばれる者たちの近未来SFです。こちらもなかなか面白いです。
閑話休題、そういった類の映画は大抵、暗くて、目をそむけたくなって、見終わった後どよ~ん(=_=;)となるような映画が大半でしたし。
『キングスマン』はエンタメであり毛色が違うはずなのにそれをやっちゃってる。妙な違和感の正体はそれかな、と。
現在2024年ともなるとそんなのあたりまえじゃん、よくあるじゃん──みたいな風潮もあれど、この『キングスマン』が公開された2014年、今から10年前はまだまだそんな映画は少なかったように思えます。
(残酷に)人を殺すのを見て「カッコイイ! スタイリッシュ!──とか思う自分てどーなん? 人の頭が爆発するの見て笑う自分てありなの? 」と、こういう映画は少しでも観ている側がそう思わなければマズいんちゃうかな、とも少し。
(^_^;)
そういった意味では新しい時代の映画、というより、深読みし過ぎだとは思うんですが『別に面白きゃゃいーじゃん』という風潮に対するアンチテーゼみたいにも思えるから不思議です。形は違えど、これは、以前このエッセイでも取りあげました『Mr.タスク(2014)』と類似品なのかもしれんぞ、と。
今や映画好きなら観てない方がおかしいくらいではありますが、めちゃめちゃ面白いです。ホント、お薦めです。それこそ割りきって、映画を観ている間はとにかく楽しんで笑ってもいいと思います。
ただ、見終わった後に私も感じましたあの違和感を少しでも感じてほしいような気がしないでもないです。それさえ感じることができれば別にR15なんて看板は取っ払っちゃってもいいと思うくらいです。
とはいえ、『キングスマン』ごっことかいって小学校の教室で彫刻刀なんかで遊ぶ姿を想像すると親御様がゾッとするのもわかりますがね。
(-_-;)
あ、今の小学校は彫刻刀なんて使わせないのかなw
そう、この映画の本当に怖いところはノリでそんなことを誘発してしまいかねないってとこなんです。ズバズバ死んでいく人たちに「痛み」をどこか感じないんですよ。それどころか逆に「おお~、すげぇ…… 」とか見いっちゃう。
ボクにとって映画ってのは“転ばぬ先の疑似体験”みたいなところもあるんで、なんていうのか「ダメ! 絶対!」みたいなのがないと逆に不安になっちゃう(笑)
なんだろうな……?
例えるならば……
免許の書き換えや、教習所に行って、ビデオで『ワイルド・スピード(2001~)』なんかを見せられたあげく「え~、危険ですので絶対真似しないように」と言われたような感覚でしょーか?
「……いや、言ってることは間違ってないし、この教官おもろいやっちゃけど…… ちょっとアタマおかしいんちゃうか?(゜_゜;)」と認識できるかどうかを試されているような……😂
考えてみると、ボクら子供の時なんてなんも考えずに月曜ロードショーあたりで「こんなんやっていいの?」くらいの映画、民放でバンバンやってたわけですし。
比べちゃいけないんでしょうけど、ボク、ちょうどこれと一緒に『ガンジー(1982)』をレンタルして(どんな、組み合わせよ?w)見てたんですよ。
非武装の群衆市民に対してインドの軍隊が無差別射撃する(アムリットサル事件)場面なんて『キングスマン』の問題のシーンよりゾッとしましたし、有名な“塩の行進”の場面でデモ市民が警官に肩や額を棒で打たれるのを見る方が数倍 ”痛く“ 感じるんですね。
そう、ただ棒で殴るだけ。うっすらと流れる血。それがとても胸に刺さるんです。
だったら『ガンジー』もR15にすべきじゃないかというとそうはならない。これは観ている側の良心が痛むからなんだろーなと。
まあそこでガンジーが『これを我慢しろっていうのが非暴力ってんなら…………断食なんかやめたぁぁぁぁぁ!』と、サラリーマン金太郎のごとく群衆をバイクで先導して『マッド・マックス』ばりのアクションでインド軍隊を血祭りにあげいく……となるとまた話は違うのかもしれんけど。
現在、パート2も制作されておりますので楽しみですな。(『2』どころか『ファースト・エージェント』も公開されておりますね。今回の感想は『1』公開時の感想に加筆修正を加えたものになります🙇)
やっぱり前作を越える過激描写にまた走ってしまうのか……?
あ、『ガンジー2』じゃないですよ。そんな映画は存在しません、念のためw
では、また次回に!