[実話]母親が泥酔して大怪我して帰ってきた
その日は、異常に暑い夏の夜だった。窓を開けても、まるでサウナの中にいるみたいに熱気がどんどん流れ込んできて、部屋の中がまるで焼き鳥のようになっていた。私はソファでうたた寝をしていたけど、何か変な感じがして目を覚ました。普段なら、母は9時には帰ってくるのに、その日はなぜか全然帰ってこない。あれ、なんかヤバくない? そう思って、なんとなく嫌な予感が胸をよぎった。
その予感は、玄関のドアがバン!と大きな音を立てて開いた時に、確信に変わった。おお、帰ってきた!でも…なんか違う。普段の「ただいま!」じゃなくて、足音がよろめいて、トランポリンの上を歩いてるみたいにフワフワしてる。
私は恐る恐る玄関へ向かうと、そこには見慣れた顔がひょっこりと現れた。それは母だった。だが、いつもの母じゃない。顔が真っ赤で、目が半開き、完全に「酔っ払いのワンダーランド」に迷い込んだ状態だった。
「おかえり、お母さん。」私は無理に笑顔を作って言ってみた。母は一瞬目を合わせたものの、そのまま私をスルーして、よろよろ歩きながらリビングに向かって行く。そして、ソファに「ズサーッ!」と勢いよく座った。
「大丈夫?」と尋ねたけれど、母は無理に笑顔を作って、ふわふわと、「大丈夫、大丈夫…」と一言。
でもその目はまるで、宇宙人が地球に降り立ったかのように虚ろだった。私は手を伸ばして母を支えようとしたけど、急に母がバランスを崩して、そのまま膝からドッスン! 床に倒れてしまった。と、同時に「プシャー!」と血が…うわっ!血が床にポタポタと落ちる音が響く。
「母さん!しっかりして!!」私はパニックになりながら叫んだ。母はまるでリスのように小さな声で、「だ、だいじょうぶ…」と呟くけれど、顔色はすでにおかしなことになっていた。膝から血がどんどん滲み出し、その血の赤さがまるでド派手な絵具のようだ。
「どうしてこんなことに…」私は涙をこらえきれずに叫んだ。もはやドラマのワンシーン並みの展開で、ちょっと笑ってしまいそうなぐらいの惨状だった。
しばらく沈黙が続き、母が力なく口を開いた。「ごめんね、あなたに心配かけて…。でも、もう、どうしようもなかったの。」 そこで、母はひとしきり酔っ払いの弁解大会を開き始めた。酔いが回り過ぎて、何を言っているのかさっぱりわからない。
「毎日、何もかもが重くて…仕事も家のことも、すべてがもう無理だったから、お酒でちょっとだけ逃げたかったんだよね。」母は一生懸命に目を閉じて、顔を手で覆って続けた。「でも、気づいた時にはもう…あれ、手遅れだった。」
「お酒、飲みすぎたって感じ?」と私は真顔で聞いてみた。すると母はむくっと顔をあげ、「そうだよ、まさか膝まで切ることになるなんて…!」と力なく笑った。
私はその言葉にうんざりしながらも、母の顔を見つめて、なんとも言えない複雑な気持ちになった。でも、その時だけは少しだけ、気が楽になった。だって、母はまだこんな風に、やり直せるチャンスがあるんだ、と思えたから。
その後、私は必死に母を支えながら、床にポタポタ落ちる血を拭き取った。傷を手当てしたり、ソファに寝かせたりして、やっとの思いで一息つくことができた。
数週間後、母はお酒を控えるようになり、ちょっとずつだけど穏やかな日常が戻ってきた。それでも、笑い合う日々が戻ることはなく、母は依然として自分の失敗を悔いながら、「あなたに心配かけたくなかった…」としつこく謝り続けた。
でも、私は気づいた。母が一番辛かったのは、私に心配をかけることだったんだ。だから、これからは何でも支えていこう、どんな小さなことでも。
そして、母が言った。「もう心配かけたくないよ。少しずつ、前に進んでいこうね。」その言葉に私は、無意識に胸の中でグッドサインを出した。そして、心の中で誓った。「母を支え続けよう、どんな時も!」
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