こどもたちとのカードゲームづくり
カードゲーム遊びの萌芽
きっかけは、ある日学童保育に通う3年生の男の子が「学校でこんなの作ったんだー!」と自由帳に描いたカードゲームを見せてくれたこと。おやつを食べ掃除を終えると、自由帳の白紙のページをハサミでおおよそ長方形に切り、たくさんのカードを作っていきました。
カードのデザインは至ってシンプル。
・イラストを描く
・名前を描く
・1〜30までのダメージと、必要に応じて適宜効果(次のターン、相手は1回休みなど)を書く
「ゆーだいも、作るの手伝って!」と声をかけてもらえたことから、関わり合いの中での遊びがスタートしました✨
関わり合いの広がりから生まれた「きんにくまっちょさん」
さて、3年生の男の子と私とで一緒にカードづくりをしていると、5年生の男の子がやってきました。カードづくりをしていることを伝えると、彼も仲間に加わることに。次第に数人の1年生たちも様子を覗きに来ました。
私が作ったカードは、こちら笑
敢えてシュールなイラストを描きました笑
効果とダメージはこどもたちに決めてもらうことに。どこかの学校にいそうな「こーちょーせんせい」のカードの効果は「せいとに めいれいして こうげきさせる」に決定😂笑
しかも、0〜30までのダメージが許されている中、まさかの「2ダメージ」😓笑
こんなやり取りをしているうちに、「見て!オレも描けた!」と5年生の男の子がカードを見せてくれました。それがこちら!
↑「きんにくまっちょさん」🤣
イラストが私のツボに入ったので、本人の許可をいただき撮影・掲載させてもらいました✨
なんとも言えない表情が良いですよね笑
普段はポケモンの模写などをしているイメージの彼(あくまで私との関係性の中で、私が見える範囲で)が、関わり合いの中でどこか吹っ切れた「ザ・小学生男子」的なイラストを表現してくれたことがとても嬉しかったです✨
テストプレイ→課題発見→対話の中で新たなルールが生まれていく
カードが少しずつ出来上がり、いよいよ実際に遊んでみることに。3年生の男の子が作った大まかなルールは、次のようなものでした。
【カードゲームのルール】
①同じ枚数になるようにカードを分け合い、全て手札にする。
②カードを3枚控えに、1枚バトル場に出す。
↑真ん中の2つの長方形の部分がバトル場(双方のプレイヤーがバトルに出すカードを置く場所)、画面上と下にそれぞれ3つずつある長方形の部分が控えを置く場所。
③バトルでは、双方のカードに書かれた数値を比較する。「数値が高い方–数値が低い方」という計算をし、その差分が、数値が多いカードを出したプレイヤーの得点として入る。バトル後、双方のカードをトラッシュ(捨て札に)する。
…例えば、自分が「12ダメージ」のカードを持ち、相手が「9ダメージ」のカードを出した場合、双方の差である「3ポイント」が自分に入る。
↑得点は、バトルフィールドの空いたスペースに手書きで書かれていきました。
④双方、控えからバトル場に新しいカードを出す。空いた控えに、新たなカードを手札から補充する。
⑤手札が全てなくなるまで、上記の流れを繰り返す。最終的に獲得ポイントが多いプレイヤーの勝ち。
「実際にこのルールで遊んでみよう!必要に応じて適宜ルールを変えたり作ったりしていこう!」ということで、原案者の3年生の男の子と私とでバトルをしてみました。
やってみて、良かった・面白かったポイントは次の3つ。
・「相手を倒してダメージを与える(ライフポイントを削る)のではなく、ポイントを獲得していく」という仕組み…彼の優しさが現れている気がしました✨
・「一度バトルで使ったカードはトラッシュする」というルールの良さ…強いカードが残り続けて一方的に相手を殴り続けるというプレイングができなくなり、どのカードをどのタイミングで出すかを考える必要性が生まれる。
・「○回休み」の効果の使いどころの駆け引きが面白い…例えば「1ダメージ」などの弱いカードは相手とのバトルではほぼ勝ち目がない。しかし、「○回休み」系のカードと組み合わせ、相手がバトル場にカードを出せない状態で「1ダメージ」など低ポイントのカードを出すことで「ポイントを獲得しながら、バトルではほぼ活躍しないカードを捨てる」ことができる。
もちろん「○回休み」系のカードと、最強カードである「30ダメージ」を組み合わせて高得点を狙っても良いが、その場合相手とのバトルで勝つカードを1枚消費することにもなる。弱カードを捨てる機会にするか、高ポイント獲得の機会にするかという択が生まれる。
一方で、実際に遊んでみて「全てのカードを混ぜてシャッフルし、同じ枚数ずつ配る」のでは、場合によっては最強カードである「30ダメージ」のカードがどちらか一方に固まってしまう可能性があるという課題に気付いた3年生の男の子。
そこで、「きんにくまっちょさん」を生み出した5年生の男の子も交えたプチ話し合いがスタート。その結果、新たに
・「30ダメージ」のカードが同じ枚数ずつになるよう偶数枚作る
・バトルの前、先に同じ枚数ずつ「30ダメージ」のカードを配ってから、その他のカードをシャッフルして同じ枚数ずつ配る
というルール・仕組みが生まれたのでした✨
↑「30ダメージ」を与えるカードを増やすために「🌀のトライアングルバカヤロー」というカードを制作したのは、「きんにくまっちょさん」の生みの親である5年生の男の子。「某キャラクターに見える!」と周りにいた子たちも盛り上がっていました。
こうしてゲームバランスが改善されたルールで、こどもたち同士でのバトルが行われていったのでした。
まとめ〜何気ない遊びの場面に詰まっている大切なもの
上記のエピソードを紐解くと、
・新たなものを生み出すプロセスの中で対話や協働性が生まれていく。その進み方は未知(未だ知られていないもの)であるため「先生–生徒」「教える–教わる」という一方向的な関係性は崩れ、その活動に参与する人々がそれぞれの感性を持ち寄る必然性が生まれ、それらが混ざり合った間主観的な場で新たなものが少しずつ立ち現れていく(必ずしも立ち現れる確証はないという不確かさも併せ持つ)。
・ルールや仕組みとは既にあるものではなく、対話を通して協働的・共創造的に生まれるもの。また、固定的・普遍的なものではなく、必要に応じて適宜対話を通して創り変え、改善されていく余地があるもの。
ということが見えてきます。
何気ないこどもたちの遊び。しかしその中には、固定化されたカリキュラムに基づくわけではない〝未知〟を真ん中にした協働的・共創造的な学びや育ちの在り方、そして「ルールを守る(破ったら罰せられる)」ではない対話的・民主的な社会の在り方に繋がる様々な大切なものが詰まっています。
そのようなプロセスに目を向け、こどもたちと一緒に「いま、ここ」を創る時間はとてもわくわくしますし、「オトナ–コドモ」という上下関係を越えて、行き先がわからない旅路を共に進む同志的な関係性へと足を踏み入れることになります(その分、在り方が鋭く問われることにもなります)。
何気ない、けれど大切なことが起こり大切なものが生まれている遊びをどう捉えるか。これからも私自身の感性を深めていきたいです。
⭐️これまでの遊びについての記録はこちらから
https://ameblo.jp/yokomeyagi19/entry-12597272570.html
https://ameblo.jp/yokomeyagi19/entry-12587120541.html
その他の実践については、アメブロ「ゆーだいのアニメーターへの道」(アニメーター=遊びに生気(アニマ)を吹き込む人という意味)をご覧いただけたら嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました😊
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