クリニックの目指す方向を決める
結構うちの法人は自由度が高いので、特にクリニックの運営に対して口を出されることはありませんでした。コロナまでは、のほほんと診療してても、それなりの患者さんは来てくれていたので、病院勤務医の感覚が残っていて、自分がクリニックの舵とりをしているという意識は正直希薄だったと思います。
しかしコロナ流行当初では外出自粛や集団生活の制限によって、感染症の罹患が大きく減少したため小児科クリニックは大幅な減収となり、雇われ院長といえども流石に危機感を感じていました。小児科の減収は当法人に限ったことではなく、全国的な傾向であり、閉院を余儀なくされた小児科医院も多数あったようです。
コロナ禍で見えてきた本当の患者インサイト
こういった状況の中でもクリニックに来て下さる患者さんも多くおられました。彼らのすべてが重症疾患で救急を要する状態なわけではなく、本当に一般的な便秘や湿疹といった患者さんも多く受診されました。おかげで、コロナ禍にあって他院が大幅な減少となっている中で、当院は昨対で80%程度の減収を底として、数か月で立ち上がることができました。
このことは結構インパクトのある出来事でした。もともと患者さんとの関係は良好だなという自負はあったのですが、こういう状況でも来院してくれるとは思っていませんでした。
この経験を通して、本当の意味で小児科クリニックに求められているのは、家庭でも学校でもない、気兼ねなく子育てや病気について相談できる
サードスペースとしての役割であると確信しました。そういった視点で思考を巡らせることが、患者インサイトの本質にたどりつける道だと感じました。
目指すクリニックとは…
こういった経験を経て、自分が目指すクリニックの方向を、
患者さん親御さんの居心地の良いサードプレイスとなる。
と設定しました。法人には別のミッション・ビジョンが存在するため、
まずは自院のスタッフ内でこの目標を共有することにしました。
既存の運営システムでは小児科クリニックは軽症疾患の高回転の診察で、時間あたりの診察患者のキャパシティーを増やすことで勝ち筋を作ってきましたが、それでは患者さんのクリニックに対するロイヤルティーは醸成されません。既存のシステムやオペレーションをバージョンアップする必要がありました。この点に関しては後述しますが、MBAでは欠かせない企業運営の基本となるミッションを自分なりに設定し、スタッフと共有できたことで、自分のクリニックづくりの第一歩を踏み出した実感が湧いてきました。