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肩こり・胃もたれ・疲れ目

 タイトルに挙げた単語は、ごく一般的に使われる身体の軽い不調を示した言葉たちである。

「最近肩こりがひどくて……」「脂っこいものを食べて胃もたれになっちゃって……」「疲れ目の原因はスマホばかり見ているからじゃないの?」

 例文も挙げてみた。日本中至るところで聞かれる文章だ。

 ただ昔からこの言葉たちに違和感があった。違和感があるので、まず自分からはこの言葉を使わないし、人との会話の中で出て来ても、曖昧にうなずいてごまかしたり、とにかくその場をやり過ごしてきた。

 なぜ違和感があるのか。それはまさに次の理由に尽きる。

「肩こり・胃もたれ・疲れ目ってどんな状態か、本当にみんな分かっているの??」

 言葉自体は知っている。辞書的な意味も、何となく分かる。ただこれらはいずれも自分の身体的な感覚に、言葉として外形を持たせているだけであり、その身体的な感覚は所与のものでも無ければ、万人に共通の感覚なわけでもない。

 それにも関わらず、皆嬉々としてこれらの言葉を使ってコミュニケーションを取ろうとしている。「いやいやあなたの思う肩こりと私が思う肩こり、本当に同じなんですか??」と、ひねくれた自分は考えてしまい、この言葉を使うのを躊躇してしまうのだ。

 と言っても自分だっていつかは、これらの言葉を何のためらいも無く堂々と使ってみたいが、誰かに身体を乗っ取ってもらい「これは肩こりですよー」「これが胃もたれですよー」「疲れ目はこんな感じです」と教えてもらうより他なく、途方に暮れてしまう。

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