見出し画像

赤ちゃんの泣き止まない症状「乳児疝痛」と、その後のアレルギー疾患の発症リスクは関係する?|2024年9月7日

■ ブログで公開した内容の深掘りです。

( 本記事は、メンバーシップ(アドバンス)の記事です。メンバーシップの概要は、こちらをご参照くださいm(_ _)m)


乳児疝痛は生後数か月の赤ちゃんに見られる激しい泣き症状。乳児疝痛後の問題への影響が示唆されてきており、大規模研究で詳しく調査された。

■ 乳児疝痛、コリックや黄昏泣きとは、赤ちゃんが理由がはっきりしないまま激しく泣き続ける症状のことです。


■ この症状は、赤ちゃんが生まれてから数か月間に起こることが多く、時間が経つと自然に良くなります。
■ しかし、赤ちゃんが泣き止まないので、お父さんやお母さんは心配になってしまいます。

■ どういう状態を「乳児疝痛」と呼ぶかによって、この数字は変わってきます。一般的には、1日に3時間以上、週に3日以上、そして3週間以上続けて激しく泣く場合を乳児疝痛と呼ぶことが多いです。

■ 乳児疝痛がある赤ちゃんは、全体の1.5%から11.9%くらいという報告があります。

Reijneveld SA, Brugman E, Hirasing RA. Excessive infant crying: theimpact of varying definitions.Pediatrics. 2001;108:893-897.4.


■ 乳児疝痛がなくても、生まれたばかりの赤ちゃんは泣く時間が長いものです。
■ 生後6週間くらいまでは1日に2時間以上も泣いていることがあります。その後、3か月くらいまでには1日1時間程度に減っていきます。

Wolke D, Bilgin A, Samara M. Systematic review and meta-analysis:fussing and crying durations and prevalence of colic in infants.JPediatr. 2017;185:55-61.e4.

■ では、なぜ赤ちゃんは乳児疝痛になるのでしょうか?
■ 実はまだはっきりとした原因はわかっていません。

■ しかし、いくつかの可能性が考えられています。
■ 例えば、ストレスや、赤ちゃんのお腹の具合、腸内の細菌バランス、食物アレルギーなどが関係しているかもしれないと考えられています。

Savino F. Focus on infantile colic.Acta Paediatr. 2007;96:1259-1264.

■ また、お母さんのアレルギー体質や、赤ちゃんが長子(一番上の子)であること、受動喫煙なども、乳児疝痛になりやすくする可能性があるそうです。

■ 最近では、腸内の細菌が乳児疝痛に関係しているのではないかという研究も進んでいます。そのため、プロバイオティクスを与えることで症状が改善するかもしれないと期待されています。


■ また、乳児疝痛を経験した赤ちゃんが大きくなってから、機能性消化器疾患や片頭痛になりやすかったり、アレルギーになりやすかったりするのではないかという研究結果もあります。

■ ただし、大規模な調査では関連が見られなかったという報告もあるので、まだはっきりとしたことは言えませんでした。

Castro-Rodrı́guez JA, Stern DA, Halonen M, etal. Relation betweeninfantile colic and asthma/atopy: a prospective study in an unse-lected population.Pediatrics. 2001;108:878-882.

■ そこで、コペンハーゲン前向き小児喘息研究2010(COPSAC2010)という大規模コホート試験により、乳児疝痛の原因や、その後の健康への影響を詳しく調査されました。


この論文でわかったことをざっくりまとめると?

COPSAC2010コホートの700人の小児とその両親を対象に、妊娠24週から6歳までの前向き観察研究を実施し、詳細な臨床表現型解析と生後1か月時の腸内細菌叢の16S rRNAシーケンシング解析を行った。

✅️ 695人の小児のうち55人(7.9%)が乳児疝痛を有し、人種、授乳方法、ペットの有無などの要因が疝痛と関連していた。
【簡単な解説】 調べた695人の赤ちゃんのうち、55人(100人中約8人)が乳児疝痛がありました。乳児疝痛になりやすいかどうかは、赤ちゃんの人種や母乳で育てられているか、家でペットを飼っているかなどと関係がありました。

✅️ 乳児疝痛を有する小児は、その後の便秘(調整オッズ比 2.88)、喘息(調整ハザード比 1.69)、アトピー性皮膚炎(調整ハザード比 1.84)のリスクが有意に高かった。
【簡単な解説】 乳児疝痛があった赤ちゃんは、大きくなってから便秘になりやすかったり、喘息やアトピー性皮膚炎になりやすいことがわかりました。

グラフィカルアブストラクト。



以下は、論文の解説と管理人の感想です。

ここから先は

2,556字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

noteでは、ブログでは書いていない「まとめ記事」が中心でしたが、最近は出典に基づかない気晴らしの文も書き散らかしています(^^; この記事よかった! ちょっとサポートしてやろう! という反応があると小躍りします😊