「遭難」のトラップ(罠)に嵌る!?
8月3日、危うく遭難しかけるという場面に直面しました。
場所はスペイン、アンダルシア州の山中。Googleマップで検索したトレイルのルート途中でGPSが途切れ、インターネット接続も遮断。青木ヶ原樹海のような林の中をぐるぐるさまよい、出られなくなってしまったのです。
iPhoneが高温でいったんシャットダウン。そこでGoogleマップも一旦切れてしまって、設定されたコースが表示されなくなるという悲劇。
暑さも35度を超えていて気力体力を奪われる場面でもあります。
一時、インターネットがつながる場面もあったのですが、なぜかGoogleマップは正常に機能せず「経路を再検索」という表示が続くばかり。
つれあいぴあぴにメッセージを送り、現在地点を示すコンパスアプリのスクリーンショット(経度と緯度が表記)を添付。万が一、救助に来てもらう際に少しは役立つかも。
道は主要幹線道から派生したルートで車も通る道。ただし、舗装されてはおらず、標識もなく、ほとんど誰も通らない道。
無駄に動いても体力を消耗するだけなので、とりあえず午後7時にテントを設営。標高480メートルで夜から朝は冷えることも予想されます。
万が一、ここから出られなかったらどうなるのか…?「遭難」の二文字が頭を掠めます。
救助要請をするとしたら?ヘリコプターとか飛ばしてもらったらそれだけでも相当な費用がかかる?
もし生きて戻れなかったら…?
つれあいぴあぴを悲しませるだけでなく、彼女に多大なる負担や迷惑がかかるということは明らかで、現にここで音信不通となってしまってかなり心配してくれていることも確か。
そうなると何が何でも生きてこの場所を出なければ…という思いに。ネガティヴなことを考えてたら本当に落ち込んでしまうだけ。
「絶対にあきらめてはならない!」
まずは自分にそう言い聞かせます。不安な時にこそ、深呼吸をして笑顔!
水と食料はある程度予備を携行していたので、暑さが厳しくならなければ何とか1日は持ち堪えられそう。
こういう時に、パニックになってしまっては余計に大変な状況になるということは常々考えていました。
冷静に、現状で考えられる方法をあれこれ模索。
翌朝、日の出前にテントを撤収し、コンパス(方位磁石)のみを頼りにルート探しをしましたが、どうしても行き詰まります。たどり着くべき町は南東方向。どうあがいても南東に抜ける道が見つかりません。
見覚えのある道だと思ったら、奇妙な形の木が道の脇にある。驚異的な直感で、来た道を引き返すということを思いつきました。砂地の道を見たら、バギーの三輪の轍(わだち)とシューズの足跡があったことが幸い。これをたどれば昨日舗装された国道の分岐点に戻れるはず…。
正解でした。9キロほどの距離でしたが、何とか魔の分岐点まで引き返すことができました。
涙が止まりませんでした。何とか生き延びられる!
しかし、その国道に戻れたものの、暑さの中、最も近い次の町アロチェまで12キロほど。登り下りが続き、体力もかなり消耗。持っていた水は何とか足りそうでしたが、ふらふら歩いている私を見て止まってくれた車のドライバーから水をもらいました。
自力でピンチを抜け出す…これは本当に難しいことですが、やはり必死(死にもの狂い)になって頭と体を使うということなのでしょう。
突然、つれあいぴあぴから電話が…!!
町が近づいてネット接続も可能に。
メッセンジャーのテレビ電話で無事を伝えて、とりあえず次の町を目指します。
命からがら…というのはまさにこんな状況を言うのでしょうか。
坂の上にあるアロチェの街のホテルに飛び込みでチェックイン。日曜日でお店はすべてしまっていたもののホテルに併設されたレストランでまともな食事を久々に取りました。
シャワーを浴び、手洗いでシューズやウェアを洗濯。エアコンの効いた部屋で、ベッドで眠れる…あらためて生きて戻って来れたこと(=生還)に感動する場面。
判断を一つ間違えると命取りになるということを今回学ばされました。
現代人にとって必要不可欠のGPSとインターネットが使い物にならなくなった時、どうするか?
ふだん街で暮らす人には問題ないかもしれないが、山を歩く人、国外で旅をする人は十分考えておく必要があると思います。
遭難した時、だけには限らないのですが、「トラップ(罠)にハマる」その瞬間には気づかないもの。それでも、後になって「あそこでああしておけばよかった…」と思うことが必ずあるはずです。
詐欺に遭ったり、事故に遭ったりなどのトラブルは事前の判断で避けられるものもあるということでしょう。
今回の遭難騒ぎはいろんな教えを学ぶことができたと思います。
*アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦のメルマガ「週刊PEACE RUN」より転載
*本編動画はこちら
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