粒あんとこしあんの違いについて
今日のテーマはデジタル化とは何の関係もありません。
先週広島へ出張をして、その帰りにお土産としてもみじ饅頭、正確には「にしき堂の『生』もみじ饅頭」を買おうとしたのですが、店頭にいろいろな種類があって迷いました。普通のもみじ饅頭(こしあん)、粒あんもみじ(北海道産小豆を使った粒あん)、粒あんもみじ(広島県産小豆を使った粒あん)、おとなのもみじ 抹茶とあん餅、それから生もみじ…
パートナーは普段粒あん派、私はこしあん派なので、生もみじの粒とこしを買って帰ったのですが、粒あんとこしあんはどういう使い分けがされるのだろう?という議論をしたのでここに記録をしておきたいと思います。
あんこの定義
「あんことは、食材を煮詰めて練ったペースト状のものである。」これが日本あんこ協会によるあんこの定義です。砂糖を入れることや豆を材料としていること、甘味であることは十分条件ではありますが、必要条件ではないとのことです。したがって、中東の伝統料理であるフムスは、茹でたヒヨコ豆にニンニク、練り胡麻、オリーブオイル、レモン汁などを加えてすりつぶし、塩で調味したペースト状の料理ですが、これもあんこの一種であると考えられるということでした。
あんこの種類
こちらも日本あんこ協会のウェブサイトにそれぞれの定義が載っていました。
粒あん
小豆をつぶさないように炊いた小豆のあんこのこと。小豆そのもののうま味とえぐみ、独特の風味が凝縮されている傾向にある。
※熟練の技をもつ製餡職人が炊き上げる粒あんは、皮に一切の破れもなく、見事なまでに美しい粒が整っている。こしあん
小豆を炊き、つぶを裏ごしして外皮を取り除き、砂糖を加えて練り上げたあんこのこと。非常に滑らかで、美しい小豆色、あるいは藤紫色。
※熟練の技により滑らかさに違いがあらわれる。つぶしあん
粒あんの粒をあえて潰して炊き上げたあんこのこと。つぶつぶした感じはないが、外皮が小豆の独特の味を残しているため、こしあんより小豆の味を楽しむことができる。小倉あん
大納言など大粒の小豆を蜜煮で甘くして、こしあんに混ぜて作ったあんこのこと。
こうしてみると、普段「粒あん」と呼んでいるものは「つぶしあん」だったような気がしてきました。これまであまり気にしたことはありませんでしたが、小豆が全くつぶれていない「粒あん」はあまり見たことがないし食べたこともないと思います。それから、作り方に関しては、大きな鍋などに小豆と砂糖を入れて煮詰めてできたものが「粒あん」で、それを裏ごししたら「こしあん」だとばかり思っていましたが、小豆を炊いて裏ごしした後に砂糖を加えて練るものだったのですね。
私は「粒あん」と「こしあん」では裏ごしの工程が追加する分、「こしあん」のほうが手間がかかっているので高級なのだ、と思っていましたが、「粒あん」の場合、小豆をつぶさないように炊かなければならないので神経を使いますし、おそらくある程度の熟練技が必要だろうと思います。さらに、手間をかけて裏ごしをした「こしあん」に別の大粒の小豆を甘く煮て混ぜる「小倉あん」は工程がさらに増えますし、大粒の小豆を煮る際にもつぶれないように熟練技が必要になるでしょう。こう考えると、最も工程が少なく神経も使わない気楽な?あんが「つぶしあん」になります。
それぞれの種類のあんこを、縦軸に工程の多少、横軸に熟練技の要・不要をとってマトリクスにしたのが下の図です。
使われるお菓子
場合分けをしてみました。例えば「関東風の焼き皮の桜餅にはこしあん」とルールが決まっている場合もありますが、多くは好みによって使い分けているように思います。ただ、たい焼きや今川焼にこしあんが使われることはないですし、練り切りに粒あんが使われることもないのではないでしょうか。このあたりの法則はまだ研究の余地がありそうです。
粒あん
おはぎ、どら焼き、大福、たい焼きこしあん
ようかん、水ようかん、練り切り、蒸し饅頭、関東風焼き皮の桜餅つぶしあん
あんみつ、関東風ぜんざい、おしるこ、たい焼き、どら焼き、今川焼、まんじゅう小倉あん
あんぱん、どら焼き、関西風お汁粉、ぜんざい、名古屋名物の小倉トースト
まとめ
もみじ饅頭をきっかけに、あんこの種類とそれぞれ使われるお菓子を整理してみましたが、個人的には大人の自由研究のような感じでなかなか楽しめました。中東のフムスもあんこの一種というのは意外でしたが、「あんこは甘いもの」という先入観を持っているのは日本人だけなのかもしれません。
また、フムスがあんこの一種なのであれば、ピーナッツバターや練りごまもあんこと呼んでよいのか?と思いました。調べてみたところ、ピーナッツはマメ科の植物ということなので、一瞬あんこと呼んでもよさような感じもしましたが、作る段階で煮詰めるわけではないのであんこではなさそうです。また、ゴマは実なのでこちらもあんこにはならないですね。
これから和菓子を食べるときには、そのあんこがどの種類なのかよく観察してみようと思いました。