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三菱一号館美術館「異端の奇才——ビアズリー」展へ。世紀末の妖しい魅力に溺れた日

先日、三菱一号館美術館で開催中の「異端の奇才——ビアズリー」展に行ってきました。

三菱一号館美術館「異端の奇才——ビアズリー」展

以前からビアズリーの耽美で退廃的な作風に惹かれていたのですが、今回の展覧会では、彼の初期から晩年までの作品を網羅的に見ることができ、その才能を改めて痛感しました。

なかでも、特に印象的だったのは、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の挿絵です。

オーブリー・ビアズリー《クライマックス》
オーブリー・ビアズリー《踊り手の褒美》
オーブリー・ビアズリー《プラトニックな嘆き》
オーブリー・ビアズリー 《タイトルページ》


ビアズリーは、ワイルドの依頼を受け、1894年に出版された英語版「サロメ」の挿絵を担当しました。この作品群は、ビアズリーの名を世に知らしめるとともに、世紀末芸術を代表するイメージとして、今日まで強い影響を与え続けています。

ビアズリーが描く妖艶な「サロメ」の世界

展示室に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、「ヨカナーンの首を持つサロメ」や「孔雀のスカート」といった、「サロメ」の挿絵の数々です。

ビアズリーの描くサロメは、妖艶でありながら、どこか冷たく、残酷な雰囲気をまとっています。細密な線描で描かれた人物や装飾は、見る者を圧倒するほどの存在感を放ち、まるで舞台の一場面を切り取ったかのようです。

特に印象的だったのは、「ヨカナーンの首を持つサロメ」です。銀盆に載せられたヨカナーンの生首を前に、サロメは恍惚とした表情を浮かべています。その表情は、欲望と狂気に満ちており、見る者に強烈な印象を与えます。

ビアズリーの挿絵によって、「サロメ」は単なる戯曲ではなく、視覚的にも強烈なイメージを伴う作品として、多くの人々の心に刻み込まれることになったんだと思っています。

ワイルドとビアズリー、二人の天才が描いた「サロメ」

オスカー・ワイルドの「サロメ」は、聖書に登場するサロメの物語を、耽美主義的な視点から描き出した作品です。ワイルドは、サロメを、男性を惑わす妖婦として描き出す一方で、彼女の内に秘めた孤独や絶望をも表現しています。

ビアズリーの挿絵は、ワイルドの描くサロメのイメージをさらに増幅させ、妖艶で退廃的な世界観をより一層際立たせています。ワイルドとビアズリー、二人の天才が互いに刺激し合い、生み出した「サロメ」は、世紀末芸術の頂点とも言える作品です。

でも、ビアズリーとワイルドの仲は本当は良くなくて、こんなにも名作と言われているビアズリーの挿絵にワイルドは満足してなかった、挿絵を気に入ってなかったというのは有名な話。
その部分を山田五郎さんがYouTubeで面白く解説してくださっています。気になる方はぜひご覧になってくださいね。ホント面白いです!

「異端」の魅力:ビアズリーが現代に与える影響

ビアズリーの作品は、当時の社会においては「異端」と見なされました。その耽美的な作風や、タブーを恐れない表現は、多くの人々を魅了する一方で、批判も浴びました。

しかし、現代において、ビアズリーの作品は、その「異端」性こそが魅力として評価されています。彼の作品は、既存の価値観にとらわれず、独自の美を追求する姿勢を私たちに教えてくれます。

今回の展覧会を通して、ビアズリーの作品は、時代を超えて、人々の心を捉え続ける力を持っていることを改めて感じました。

三菱一号館美術館「異端の奇才——ビアズリー」展は、ビアズリーの作品世界を堪能できる素晴らしい機会です。特に、「サロメ」に興味のある方には、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。

展覧会では、ビアズリーの作品を通して、妖しい魅力に触れることができます。彼の作品を眺めるだけでゾクゾクしてしまうのが不思議です。

展覧会図録も必見!ビアズリーの世界を深く知るために

今回の展覧会を訪れたら、ぜひ手に入れてほしいのが展覧会図録です。図録には、展示作品の詳細な解説はもちろん、ビアズリーの生涯や作風に関する研究者の論考も収録されています。

展覧会図録 3500円

特に「サロメ」関連の作品については、図録の中でさらに深く掘り下げて解説されており、ビアズリーが「サロメ」に込めた想いや、ワイルドとの関係性についてより理解を深めることができます。
私は家に帰ってからも何度も読み返して、ビアズリーの世界に浸っています。

ぜひ、三菱一号館美術館で、ビアズリーの描く美の世界を体験してみてくださいね。

三菱一号館美術館 館内からの眺め

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