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SWPBSの準備:TFIを使った体制整備のチェック

はじめに

SWPBSの準備が進むにつれて、「何をすればいいのか」が明確になり、役割分担もはっきりしてきます。これは、組織としての体制整備が順調に進んでいる証拠です。しかし、いざ実践を始めると、「この準備で十分なのか?」と不安になることもあります。

そこで今回は、SWPBSの体制整備がどの程度できているのかをチェックすることの大切さについて説明します。

TFIとは?

TFI(Tiered Fidelity Inventory)は、SWPBSの支援体制がどれくらい実行できているかを確認するための評価ツールです。これは研究をもとに開発されています。支援の3層構造(第1層・第2層・第3層)それぞれのレベルで、体制整備がどのくらい進んだかが評価されるように設計されています。

以下には、第1層支援の体制整備に関する15の評価項目を示します。評価は、「チーム」「実践」「評価」に分かれています。この評価項目があることで、「SWPBS第1層支援の運営に必要なチームの運営はできているか?」「実践でポジティブな行動支援を扱うことができているか?」「SWPBSの取組みを評価できているか?」といったことを得点化できます。つまり、準備に課題があれば得点は低いままであり、進捗がみられれば得点が高くなっていることがわかる、ということです。

第1層支援の評価項目(表現を簡単にしたもの; 若林ら, 2023)

なお、TFIの評価には根拠が必要です。学校内を回って実際の環境を確認する、証拠となる物(掲示物、記録、資料など)を確認する、外部専門家のチェックを受けるといった手続きは、TFI評価を適切に扱う上で大切な取り組みとなります。より客観的な評価が実現するように、各校の実情に応じた取組を考えていくことが大切です。

評価を数値化することに対する先生方の気持ち

TFIは、「足りない部分を確認し、より良い実践へと進化させるためのツール」として活用できます。しかし、TFIを活用すると、数値として得点が出てくるため、「こんな項目、うちの学校では無理じゃない?」「低得点がつくのは嫌だな…」といった声が上がることがあります。確かに、得点をつけられて、低得点だと気分はよくありませんよね。

しかし、TFIの得点は先生の人柄や努力を評価するものではありません。あくまでも、体制としての現在地を知るための指標です。むしろ、低得点の項目が明確になれば、次年度に何を優先的に改善すべきか、どの施策を実行すればより効果的かといった議論ができるようになります。そして、その議論をもとに改善が実行されることで、次の評価時には当然、得点も変わります。この数値の変化は、学校の「成長の証」として喜ぶべきものです。

TFIを用いてSWPBSにかかわる体制整備を評価し、成果や課題を受け止めながら、進捗を喜び合うことは、とても望ましいことです。こうして数値を冷静に受け止め、進捗を互いの成果として喜び合える職員室は、温かい雰囲気に包まれるのではないでしょうか。

まとめ

TFI評価を現場に勧めると、「データに対するアレルギー」が現場にあることを感じます。しかし、TFIはある意味、「答えが分かっているテスト」のようなものです。項目を見れば、何をすれば良いのかが明確です。だからこそ、評価を繰り返しながら、各項目の中で得点の低い項目を見つけ、優先順位をつけて順番に実践することが大切になります。

逆に、こうしたチェックを1回も行わずに「これをやらなきゃ」「あれをやらなきゃ」と進めていっても、良い結果は得られません。それは、まるで切れ味の悪い斧を力いっぱい振り回して、必死に木を切ろうとしている木こりのようなものです。斧の歯を研げば良いことは木こり自身もわかっているのに、「時間がないから」「忙しいから」と振り返る機会を設けないままでは、思うように進みません。

こうした「木こりのジレンマ」に陥らないためには、一度立ち止まって斧を研ぐ(=TFIを用いて体制を評価し、何を整えるべきかを確認する)ことが大切です。評価を繰り返し、次のステップにつなげることができれば、体制整備の充実は必然のものとなるでしょう。データは「学校のあら探しに使うもの」ではありません。体制を整えるために活用し、よりスムーズで効果的なSWPBSの実践を進めていきましょう!

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