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社会人から見たPBL:実社会の考え方や手法に触れる「場」の提供がカギ
教育現場にいない社会人が感じた「学生が望んでいるもの」
学科長や学部長、カリキュラム開発者など、PBL(Problem-Based Learning)に関わる立場にいる方は、学生たちが本当に何を求めているのか気になりませんか?
PBLの授業中、学生たちが真剣に課題に取り組む姿を見ていると、「彼らは何に関心があるのだろう?」と感じる瞬間があるはずです。
実は、彼らが求めているのは「自分がまだ体験していない世界」との出会いです。
それが彼らにとって、最大の学びのきっかけになります。
社会人の経験談は学生にとって未知の世界
学生にとって「未知の世界」とは、実社会の現場や課題解決を実践してきた社会人の「経験」との出会いです。
特に、自ら事業を運営する個人事業主や専門知識を持つ士業の人たちからのアドバイスは、PBLの現場で非常に貴重です。なぜなら、彼らのアドバイスは、学生にとってリアルで身近に感じ取れる実践的な具体例だからです。
ちなみに私自身の経験で言えば、大きな企業の中での「経験」については、目に見えない組織論や企業風土などが刷り込まれているので、あまり実践的ではないこともあります。
グループワークで学生の知恵が集まった
私がサポートしたPBLの一例として、法学部の学生が会社法を学ぶプロジェクトがあります。授業では決算報告に必要な会計の知識が求められましたが、法学部の学生には会計に対する苦手意識があることが事前にわかっていました。そこで、会計の基礎知識をグループワーク形式で学ぶことにしました。
具体的には、有名な3社の貸借対照表と損益計算書をゼミ生に提示し、社名だけを伝えた上でどの企業のものかは伏せました。ゼミ生は、各社の事業特性を考慮しつつ、グループで意見を出し合いながら企業名を推測するプロセスを経て、会計データの意図を深く理解しました。
この場面で大切にしたのは、 その日のテーマを「ピンポイント」に絞り、グループワークで進めたこと です。「ピンポイント」とは、課題を広げすぎず、学生の想像力が届く範囲の具体的な課題を設定することを意味します。
グループワークでは、学生それぞれの苦手意識や知識のギャップを補い合うことができます。お互いの知識を持ち寄ることで、全体的な理解が底上げされ、学生たちはより深く学び、次のステップへ進むことができました。
全員が受け身で学ぶ雰囲気にならない工夫
PBLで学生が直面する課題の一つは、「基礎知識の不足」です。多くの学生は、教科書の内容を暗記するだけで、それがどのように活用されるか理解できていません。
基礎知識を「自分事」として学ぶためには、具体的な事例を通して実践に当てはめることが重要です。こうしたアプローチを知っているのが、実社会の主体的なアプローチの経験者です。
学生と社会人の共通項を見つける
PBLを有意義なものにするには、学生と社会人が共通の理解を持つことが欠かせません。社会人は、自分にとって当たり前の知識や経験を、学生も知っていると無意識に思いがちです。しかし、こうした偏見は、円滑なコミュニケーションの妨げになります。
私がPBLをサポートした際も、この偏見を捨てることが大切だと感じました。
知識の共通項を意識し、学生に寄り添ったアプローチをすることで、学生も社会人から学びやすくなります。 実社会の経験を持つ人ならではの柔軟なコミュニケーション が、ここでのカギです。
まとめ
今回は、社会人目線でPBLで学生が求めるものについてお伝えしました。
彼らが本当に求めているのは、未知の世界に触れることです。
私自身これからも、学生たちが、実社会で役立つ「学び」を身につけられるよう、同じ目線でサポートしていこうと思います。
おしらせ
「バブル入社組」の私が退職後に出会ったPBL(プロジェクト型授業)。
そこで気づいたのは、特別な資格がなくても、あなたの経験やスキルが未来に繋がるということ。
その学びを活かし、50代60代のスキルを新しい形で活かす方法を「あなたのスキルの活かし方」としてまとめました。
これからのキャリアや社会との新しい関わり方を考えるきっかけとして、ぜひお手に取ってみてください。