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プライバシー専門家が年齢確認デザインコード対策で気をつけること
※このインタビューは2023年8月15日に収録されました
インターネット空間が子供にとって安全な場所にしていくために新しい動きが始まっています。
今回は金融分野で活躍され、現在はKidsTechEthics™で子供たちに向けたサービスをて今日するジェフさんに、年齢適正デザインコードの制定から事業者に求められることについてお伺いしました。
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前回の記事より
プライバシー専門家はどのように適正年齢デザインコードに取り組めば良いか教えていただけますか?特に企業の取締役が心がけておくべき事についてもお伺いできれば幸いです。
プライバシー専門家が年齢確認デザインコード対策で気をつけること
Jeff: わかりました。まだ多くの企業では取締役レベルで適正年齢デザインコードについて議論されている機会は少ないと思います。これは大手企業でも同様です。
大手テクノロジー企業では、適正年齢について考える機会は比較的多いのではないかと思いますが、小規模企業については取締役会でもなぜ適正年齢デザインコードに取り組む必要があり、今後のビジネスにどういった影響があるのかを正確に理解できているところはほとんどないのではないかと思います。
これまでにプライバシーオフィスに所属する担当役員とも話をして来ましたが、法律顧問から会社の戦略上取り組む必要があるとの助言から取り組み始める会社が多いと聞いています。
これはあまり良い傾向ではなく、まだ十分に浸透していない証拠だと思います。取締役会で積極的に議論を行い、適正年齢デザインコードがビジネスにどういった影響を与える可能性があるのかを検証し、理解すべきだと思います。
逆に考えれば、子供向けのサービスへの配慮や既に規制が求められる地域で先行して取り組めばビジネス上の競争優位性にも繋がります。各会社の取締役会はディレクタークラスには責任が求められるようになりますし、大きな罰則金を課される事になる懸念を想定してサイバーセキュリティ関連保険も検討しておくことが必要です。
私はもっと多くの人たちが法律の変化に気づき、ビジネス上でのデータ取得や活用に影響が出てくることを理解する必要があると思っています。そして、ここまで話をしてきたより倫理的なテクノロジーの設計や利用者の便益に優先的に取り組む環境へと変化していくことが必要だと思います。
残念ながら、現時点では企業利益を中心としたテクノロジー開発に従事する場合が多く、顧客中心へと大きく変化はできていません。今後数年間で徐々に変化が始まっていくと考えています。
Kohei: 私も倫理的な考えを持った人たちがビジネスモデル設計に関わることが必要だと思います。ジェフさんがミディアムの記事でも紹介されていた倫理的な技術に関しては、特に子供の情報を扱う場合に重要視されるべきだと思います。
倫理的なテクノロジー導入に向けて検討すべき考え方
AIを始めとした新しい技術的なイノベーションが生まれ、これまでになかったソリューション開発が進みつつありますが、より良い社会にしていくためには技術の議論だけでなく社会的な観点から技術によってもたらされるバイアスや差別等々の問題についても触れていく必要があると思います。
ジェフさんにお伺いしたいのですが、倫理的な技術を社会で導入していく際にどういったことを考えていく必要があるのでしょうか?
Jeff: 倫理的な技術を実装するために必要な要素についての質問でしょうか?
Kohei: そうですね。実装について考える際にはビジネス的な視点と開発者の視点も重要になるかと思っています。倫理的な技術開発と導入において、どういったことを検討する必要があるかお伺いできると幸いです。
Jeff: 私は利用者の方にとってどういった影響がありそうか事前に考慮することが必要ではないかと考えています。利用者がテクノロジーを当たり前のように使えるようになった際に、どういったことが起きるか予測することが必要です。
テクノロジーを駆使してコンテンツを配信するのであれば、果たして配信するコンテンツが良いものか否かを検討することも必要です。利用者に向けてコンテンツを配信する事によって対象となる利用者がのめり込んでしまい何か悪い影響が起きてしまうのではないかを含めて考える事です。
何が利用者の方にとって良いかどうかを判断することは研究結果を見ても難しいことがわかります。ウェルビーングについての調査では、ソーシャルメディアでの会話や流れてくるコンテンツが有害である事による影響について触れている研究結果もたくさん出て来ています。
私は開発者の人たちがより良いものを提供するにはどうすれば良いかを考えることが大切だと思っています。個人のプライバシーを尊重することも大切な要素です。利用者の方からどのようにデータを収集し、データを処理し、どういった条件に同意してもらって機械学習でデータを処理するのかを検討する必要があります。
いくつかの動画プラットフォーム企業が集めた個人データを活用したサービスを発表していますが、どのようにデータを利用するかが不透明で、利用者がどのようにオプトアウトできるかについても触れられていません。
こういったサービスは利用者のことを念頭に置いて設計されていないのではないかと感じてしまいます。人工知能モデルを学習させるためにデータを利用しているのかもしれませんが、データそのものや著作権等がどのように保護されるのか外から判断することは難しいのです。
利用者の許諾なく機械学習にデータを利用することは、認められないような動きも起きているみたいですね。法的な解釈は地域によって異なる面もありそうですが、倫理的に考えるとあまり良い事には思えません。
Kohei: ありがとうございます。とても大切なポイントですね。最後にジェフさんから視聴者の皆様へメッセージを頂いても宜しいでしょうか?
サービスの導入リスクを未然に防ぐ必要性
ジェフさんはこれまでに適正年齢デザインコードに加えて、子供のデータ倫理に関する取り組みを行って来ています。
多くの人たちがサービスを実装する際に気になり始めている動きかと思います。ぜひ視聴者の方にメッセージを頂けると幸いです。
Jeff: 子供達への影響を未然に理解する上で、データ保護影響評価を実施した上でテクノロジー開発に望むことが良いのではないかと考えています。
未然に取得するデータとデータを利用して提供するコンテンツについても検討が必要だと思います。子供達の利益が一体何かについても考え、逆に子供達に悪影響を与えるものは何かについても検討することが必要になります。
ここまで話してきた内容を開発時に検討することで、提供者だけでなく利用者にとっても良いサービス提供に繋がると考えています。技術の発展とともに私たちの生活に新しいイノベーションを生み出すことに繋がるのです。
例としてイノベーションが浸透した状態を100とする一方で、悪い影響によって起こりうるネガティブな状態も100としましょう。私たちが悪い方向へと1つ進むことになれば、ネガティブな状態へとつながっていくことになります。私たちがよく見るルールやガイドラインは、ネガティブな方向へと進んで行かないように、イノベーションに向かって進んでいくためにあるのです。
ただ、イノベーションが広がっていくことをポジティブに捉える人もいます。反対にお金を生み出すことだけに注力するのではなく、エンジニアリングやプライバシー専門家チームが一緒になってより良いプラットフォームを生み出すために協力することが必要になります。
現在は子供がインターネットに接続する環境においてデータ保護やプライバシーが守られることを考える必要性が高まって来ていますし、ビジネス側でも求められることについての理解が必要になって来ています。
世界的に保護を推進していく流れは進んできているので、国によって法的な考え方が異なる部分はありますが、徐々にルールとして整理されていくことになると思います。
Kohei: 貴重なメッセージをいただきありがとうございます。今日のお話を通じて、子供のプライバシーとビジネスの付加価値について考えるきっかけにもなりました。
コンプライアンス対策のためにプライバシーに取り組むのではなく、利用者の方への付加価値として取り組むことが大切であると理解しました。将来のビジネスにおいての重要度は高まっていくことになりそうです。
改めて本日はインタビューにお越しいただきありがとうございました。とても貴重なメッセージをいただきました。引き続き子供のインターネット環境についても取り組んでいければと思いますので、宜しくお願い致します。
Jeff: ありがとうございます。本日はインタビューの機会を頂き、ありがとうございました。
Kohei: ありがとうございます。
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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author 山下夏姫