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平川克美『共有地をつくる』
わたしが考えている「共有地」とは、自分の私有しているものを、他者と共有できるような場所のことです。行政によって形成されるような社会的な資本でもないし、村の共同の洗い場のような共同体の共有財産とも少し違います。
日本が貧しかった時代に、味噌や醤油の貸し借りをしていたように、わたしが所有しているものの「所有格」を解除して、同じ場所に集まる他人にちょっと貸してあげられる「場」であり、他社が喜捨してくれたものを自分も借りられる「場」です。
貧しかった時代にあったもの。今はその頃より、経済的指標では貧しくないのかもしれない。しかし、その時代に当然あったものがない。そして、それが本当は必要な状況に、今の日本はあると思う。
僕が旅先のゲストハウスで「楽しい」と感じ、「場」をつくりたいと思った。「場づくり」なんて言葉は使わなかったし、今のように「コミュニティ」という言葉も安っぽくなかった。しかし「ゲストハウス」は僕にとってパラダイスだったけれど、多くの人にとっては「自分には関係のない場所」だろうから、僕は飲食店を作った。
パクチーハウス東京も、PAX Coworkingも、パクチー銀行も、まさに平川氏のいう「共有地」だ。本書に出てくるキーワードの多くを僕も使用している。論じ方、細かな仕掛けは違うが、まさに僕が作ってきた「場」のようなものが「隣町珈琲」というところにもあった。
そういう「場」は、知らないだけで無数にあるのだろう。そこでは気づかないうちに「縁」が生まれるし、ランダムな行動や旅の過程で生じてきた事象が、不思議な「偶然」でつながっていく。
「場」は「店主」や「仕掛け人」がつくるものではない。「コミュニティは自分が作るつもりにならなかったらダメだ」という記述が本書にもあり、その意志ほど大切なものはない。しかし、それに応える多くの人の存在が「場」をよくする。
そういう「場」にたどり着けた人はラッキーだ。同じ場所にいても気づかない人もいるかもしれない。しかし、もし気づいたら、その「場」の発展や「場」のスピンアウトに意識を持って活動してほしい。
「私有財産なしで、機嫌良く生きていく」。そのための「ノウハウ」なんて書かれていないし、存在するわけではない。意志を持てば自分なりの方法が見つけられるはずだ。
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