エンジニアのマネジメントキャリアにおける技術広報
0️⃣ はじめに
結論
「エンジニアリングマネージャー(EM)に進もうか」悩んでいる、「EMの後のキャリア」で悩んでいる...
そんな方は「技術広報」も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
本記事ではこういった内容を提案できればと思います。
対象読者
マネジメントのキャリアの幅を知りたい方
技術広報の業務とは何かを知りたい方
EMと技術広報の関係性を知りたい方
著者について
キャリア:PG・SE → PjM → EM、スクラムマスター、アジャイルコーチ、技術広報
エンジニア歴:9年
本記事について
Qiita Night~エンジニアリングマネジメント~にて登壇した内容を記事化したものです。
動画はこちら
登壇資料はこちら
1️⃣ EMとは?
開発組織を取り巻くさまざまな変数である、
👥 ピープル・チーム
💻 テクノロジー
🎁 プロダクト
🏁 プロジェクト
などの状態を俯瞰して得た情報を元に、成果の最大化を目的とし各種調整を加える役割を担う方です。
より詳細なEMの定義についてはこちらの素晴らしい記事をご参照ください
https://qiita.com/hirokidaichi/items/95678bb1cef32629c317
2️⃣ 技術広報とは?
社外のエンジニアに対し、
✍️ 自社テックブログ運営
🎉 技術イベントの実施
📣 カンファレンスのスポンサー
などで、自社の認知拡大などを目的とし、技術的な情報の社外発信を推進する役割を担う方です。
またこの発信のもととなる情報は、先述した
を元にします。
なぜ技術広報が必要なのか
先日Findy社から公開された以下の記事にて、このように記載がありました。
https://findy-code.io/blog/marketreport-2309_high-tech-companies/
このことから特にリテンションの観点からは
開発組織の「技術力向上」 × 「外部発信」が重要
ということがわかるかと思います。
3️⃣ EMと技術広報における活動の比較と関係性
前節で、
EMとは開発組織を俯瞰して得た情報を元に組織の 内部 に働きかける
技術広報は開発組織を俯瞰して得た情報を元に組織の 外部 に働きかける
という、役割の違いを示しました。
ここからは、EMと技術広報が組織内でどのように活動するのかの具体例を図示していきます
1. 目標の設定
ここではエンジニアが多様なキャリアを描け、いきいきとしていて、また社内外から憧れるような組織にしていきたいという願いを込めて「開発組織の未来を彩る!」という表現としています。
2. 組織の俯瞰
開発組織を俯瞰し、注力ポイントを見極めます。
今回は
a. 組織・採用戦略
b. エンゲージメント管理
c. インナーブランディング
があがりました
3.EMの活動
EMは社内に対し、図に示すような組織の設計、メンバーとの各種調整などの活動を進めます。
技術広報は社外に対し、図に示すような、社外コミュニティの各種調整や、社外に向けてメンバーが活躍できる場の提供などの活動を進めます。
他にもここに表現している以外の業務は様々ではありますが、本記事では割愛します。
最初に決めた注力ポイントに対し、それぞれ
EMは社内の開発組織を強化し、技術広報は社外にその開発組織を認知させる
というアプローチをします。
これにより企業を認知し入社、配属されてから活躍・発信するまでの体験が確立します。
(赤枠がEM、青枠が技術広報)
また補足として、組織に直接働きかけるEMはその効果が出るまでの期間は短〜中期的(即日〜1年程度)で、主に組織外へ働きかける技術広報はその効果が出るまでの期間が中〜長期的(1〜5年程度)になります。
4️⃣ EMと技術広報キャリアにおける関係性
スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップには上図のようなキャリアが定義されており、開発者として組織をもたずより専門性を高める「スタッフプラス」と、組織をもち開発組織の成果を生み出す「エンジニアリングマネジメント」があります。
(※ここでは説明をシンプルにするため「ディレクター」の表記はしておりません)
これを参考に、本記事で提案するEMと技術広報のキャリアとしては以下です。
このようにシニアになり広くエンジニアリングの理解がついてきたところで、(社内の組織をマネジメントするのではなく)社内の組織を俯瞰し特徴を捉え発信することを主担当として活動します。
ここで表現したかったのは、
a. 技術広報はシニアエンジニアより先のキャリアとしてあること
b. 技術広報は専門性としてキャリアが必要であること
c. EMと並走(時に合流)し組織に寄与するキャリアであること
の3点です。
それぞれ解説します。
これは先述した通り、広くエンジニアリングの理解が必要であるためです。
理由としては、エンジニアが発信した内容において何が独自性、革新性に溢れているのか?などの判断をし、発信時に適切な表現を考えたり、社内で賞賛することが重要であるためです。
この表現やその発信内容のすごい点などを社内のエンジニアに説明を求めてしまうと、エンジニアの負荷が大きくなってしまい「技術広報 = 面倒なこと(※1)」と捉えられてしまうリスクがあるため、できれば技術広報の視点でこの判断が完結したいところです。
そのため、技術広報はシニアエンジニアより先のキャリアとしてあると良いと考えています。
昨今の開発組織における採用は受給Gapがあり以前として厳しい状況です。
ここに対してカジュアル面談以降の体験をより良くしたところで、前提として自社のスカウトに返信させる興味を惹かせるための認知獲得は避けて通れません。
本記事では触れられていないですが、この認知獲得はただテックブログを書き続ければ良いというわけではありません(それも難しいことではあります)。
自社と合いそうなエンジニアはどのコミュニティに属していて、どういった情報を好み、そのトレンドは何かなど常に考えていきます。
また組織が拡大すれば、それに比例してその技術領域は広がっていくでしょう。
ここで片手間で技術広報をしてしまうと、いずれかの情報発信の濃度が薄まってしまい、結果として効果的な認知獲得ができなくなっていってしまうリスクがあります。
そのため、社内で技術広報という専門性におけるキャリアを確立し、適切に評価し存続する姿勢が重要であると考えています。
これは双方のキャリアの先を見据えた時に、双方の活動内容への理解は切っても切り離せない関係にあると考えているためです
先述した(特に採用文脈では)「組織内の技術力の向上と、組織外への発信」が必要であり、前者はEM(やテックリード)が、後者は技術広報が担うという役割分担となっており、双方の状況把握や理解は後続のキャリアにおいて重要な要素です。
技術広報の観点がないバイスプレジデントは社内の組織開発はできるが外部へ発信する際の観点や文化づくりがやりきれないリスクが、EMの観点がないDevRelマネージャー(やCCO)は自社開発組織を対外発信する際にブランディングを間違えてしまい、配属後の期待調整の際に負荷をEMに寄せてしまうリスクがあります。
そのため、双方のキャリアにおいて双方の活動への深い理解が必要だと考えています。
5️⃣ まとめ
エンジニアとして、一定の経験をした上で見えてくるマネジメントのキャリア
開発組織を俯瞰して得た情報を内側へ還元するEM
開発組織を俯瞰して得た情報を外側へ昇華する技術広報
EMとしてのキャリアを選んだら技術広報に戻れないわけではない
技術広報としてのキャリアを選んだらEMに戻れないわけではない
「EMに進もうか」悩んでいる、「EMの後のキャリア」で悩んでいる...
そんな方は「技術広報」も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
🥳 Let's Enjoy Management Life ! 🥳
備考
※1:「技術広報 = 面倒」と思われるのは、他にも評価との絡みもありますが割愛
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