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vol.19 上司の「ただの1on1」が教えてくれた大切なこと
こんにちは、イギリスで働く犯罪データアナリストのpatoです。
毎週火曜日は、上司との1on1。私の上司は、警察官として30年以上の経験を持つベテランです。正直、月に1〜2回でもいいのでは?と思うこともありますが、なぜ彼が1on1を重視しているのか、わかった(気がする)エピソードを耳にしたので、皆さんと共有したいと思います。(登場する名前はすべて仮名です。)
学校の警報が鳴り続けた先にあったもの
1980年代後半、彼がまだ若手警察官だった頃、ある学校で夜間に頻繁に警報が鳴る事案が発生しました。雨の日も風の日も、夜な夜な学校へ駆けつける日々。そこで顔なじみになったのが、学校の管理人・ジョージでした。
何度も警報対応で顔を合わせるうちに親しくなり、やがてジョージの家にも招かれるようになりました。ジョージには、再婚相手との間に生まれた双子の息子と少し年上の娘、そして前妻との間に生まれた二人の娘がいました。
数年後、彼が刑事部門に異動したある日、ジョージから一本の電話がかかってきました。
「娘のエマが行方不明になった。」
エマは成績優秀で柔道の有段者。学校生活も楽しんでいるように見えた彼女が突然いなくなるなんて、ジョージも困惑していました。彼は助言をしましたが、数週間後、衝撃的な事実を知ることになります。
エマは、父親から性的虐待を受けていたのです。さらに、ジョージの最初の結婚で生まれた二人の娘も、同じような被害を受けていました。彼女たちは、エマを支えるために勇気を振り絞り、真実を語ったのです。
「まさか」の裏にある、小さなSOS
この事件は、彼にとって大きな教訓となりました。
当時、彼はエマの失踪の原因を「家出」や「反抗期」といった一般的な要因で考えていました。なぜ、彼女が優等生から突然姿を消したのか。その背景にあるSOSに気づくことができなかったのです。
その後、刑事として様々な事件に関わる中で、彼は「見過ごし」の連鎖が繰り返されていることに気づきました。
医療ミス、子ども虐待、家庭内暴力…。多くの事件で、「何かおかしい」と感じた人はいたのに、それが行動に結びつかなかったために悲劇が起こってしまうのです。
このエピソードを聞いて、私は「違和感をキャッチする力」は、犯罪捜査だけでなく、どんな仕事や日常生活にも通じる大切なスキルだと感じました。
私自身、犯罪データアナリストとして、数字やデータの中に隠れた「異変」を見つけ出す仕事をしています。数値のちょっとしたズレや、いつもと違うパターンには、背景に何か重要なサインが隠されていることが多いです。
また、仕事だけでなく、職場の同僚や身近な人たちのちょっとした変化にも、これまで以上に気を配ろうと思いました。上司が1on1を大事にする理由も、単なる進捗確認ではなく、部下の変化や懸念を見逃さないためなのかもしれません。
私も「違和感を大切にする姿勢」を持ち続け、仕事にも、人との関わりにも活かしていきたいと思いました。