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数学が大きらいなわたしの勉強のはなし

高校は公立の商業高校だった。
田舎では学校の選択肢は少ない。
進学校の普通科に行き大学まで出るか、
そこそこの頭で技術系資格系の高校に行って就職するか、
とりあえず高卒の権利を得るための近くのアレな高校に行くか。

わたしは進学校には行けないけど近くのアレな学校には行きたくないのでそこそこの商業高校に行った。

好きな学科は国語と社会。
嫌いな学科は数学と化学。
商業高校というところが理数系の学科だということを知るのは入学して1ヶ月がすぎた頃だった。

数学嫌いのルーツ

週5単位の数学に吐き気を催し、週6単位の簿記の授業ではぐっすり寝ることにしていた。
国語の時間を楽しみにし薄い教科書や参考書を隅々まで読み込む一方、数Ⅰを3年間やる学校でその教科書の半分が宇宙語のようだった。
そんなわたしも幼い頃は算数も好きだった。
転機は分数をやり始めた頃だろうか。
父が珍しく勉強を見てくれて、尋ねると帰ってきた言葉

「いいか、割り算は足し算で、掛け算は引き算だ!」

わたしは算数が大きらいになった。
計算の方法を聞いてるのに。
幻滅した。

ノルマとしての勉強

こうして算数からつまづいた私は文系教科のみを愛し、理数系学科は軒並み連帯責任のように悪かった。
中学もなんとか乗り越えたが、高校まで入ると本当についていけなくなった。
よかった、普通科に入らなくて。心から思ったが、普通科には文系と理数系に教室が分かれると聞きそれは羨ましく思った。
ギリギリ赤点にならないように必死にノルマをこなす日々。
なんとか数学の赤点を逃れて3年まで進級した。

不器用な数学の先生

3年の数学の先生は変わり者で有名だった。
50代の男性教諭で、いかにもベテランの数学教師然としていて声も小さい。
淡々とした授業で、黒板はグシャグシャだが内容はわかりやすいと頭がいい人たちには評判だった。
でも私には大変辛く、授業はお経のように聞こえた。
それでもなんとか起きて必死に解くと教室を回りながら声をかけてくれたり馬鹿にも優しいところがあった。
他の数学の先生は「そんな計算も出来ねぇのか?」みたいな感じで苦手だったからすごく嬉しくて、馬鹿なりに頑張って勉強していた。
でもそんな3年間で一番だいすきな先生の時に、ついにわたしは赤点を取った。
学年で3人くらいしか居ない選ばれし落伍者だった。
補習は職員室の横の小部屋でマンツーマンだった。

渡された問題を一人で解くように言われ頑張る。
しばらくして見にきてくれたが半分くらいしかできていない。
情けなくて悲しかった。
先生が丁寧に教えてくれて「ほらな、簡単だろ?」みたいなことを言った時にあふれ出した

「わたしは先生の言ってることもわかるし先生のことは大好きだけど数学は大っ嫌いなんですよおおおお!!」

涙目で叫んだ。
先生はなんか照れたようで

「…俺のことはいいから数学をもちっと好きになってくれよぉ…」なんて言っていた。
めそめそしながら問題を解き、なんとか卒業の単位が取れたのはあの先生のおかげだ。

勉強のモチベーション

卒業後わたしは家事手伝いを一年やった後に家出同然でアルバイトを始め、以来ずっと接客業に従事してきた。
お勉強ができなくても稼げる仕事の一つが営業、接客だと思う。
計算が必要な時は全てを電卓に委ね、口八丁手八丁で軽やかに過ごしてきた。

そんな最中に体調を崩しわたしはTwitterのタイムライン警備を怠らない日々を送っている。
そんな中ある物理学博士のアカウントに出会った。

何を隠そう子供の頃から宇宙や星座、SFの世界が大好きなので物理の世界には興味があった。

でもあれは数学ができないと無理なので学ぶことはなかった。
高校の物理は2年生の時に電子がどうのこうの言ってたのは面白かったのにそれを計算させられるので絶望した。
教科書も1センチくらいの厚みだったし、ほとんど覚えていない。

お勉強のできないわたしでも見ていいだろうか。
迷ったが視聴させてもらうことにした。

専門的な内容はわからなかったが、すごいことを証明したという理解はした。
自分なりに面白かったという感想をもち、どうにかこの気持ちを日本語で伝えたいと思って言語化してみた。

渾身の引用リツートだが、冷静に読めば失礼極まりない。
こんな頭のわるい感想にも返信をくださった博士には感謝申し上げる。

相対性理論を学ぶ

もっともっと学びたいと思った。
そもそも名前だけを知っている相対性理論を解らないといけないと思い、YouTubeの相対性理論解説動画をハシゴした。
相変わらず計算はできないが、あんなに憎かった計算式や公式、関数がなぜこの世にあるのかはわかった気がした。
あの記号の組み合わせに数字を入れ込んでそれを解くことで世界の成り立ちを知りたいと。
彼らはそんな目的のために学問を追求しているらしい。
なんとロマンあふれることだろうか。

自分なりに勉強をした結果、たけださんがご紹介いただいた動画の内容を以下にまとめてみた。

今から100年以上昔の偉い人、アインシュタインが
「重力って普通の物差しで測れないよね」
「時空が歪んでいることを前提とするとそこから波が起きるはず(重力波)それを観測できたらこの世の全てを説明できるよね」
と言って以来、世界中の物理学者がそれを証明しようと頑張っている。
地球の近所ではアインシュタインの予言した通りの結論を得ている。
最近になって地球からすっごく遠くてでっかい重力の歪み(ブラックホールが合体するところ)を観測できるようになった。望遠鏡が進歩したんだよ!
観測可能になった数値をもとに、そこから伝わる波を計算できるようになったわけだけど、その方法(関数)もいろんなやり方があるよ。
計算方法が変われば違う波も見つけられるようになるんだけど、その波をアインシュタインの関数に当てはめて間違いがないか確認していくのだよ。
今回は新しい波の発見と、さらに細かい位置の特定もできる便利な関数を見つけたので論文にまとめたよ。
それでもやっぱりアインシュタインの考えの範囲内だったからあの人すごいよね!


はい、ごめんなさい。
限界でした。
でも一つわかったのは、物理学者の皆さんは非常に哲学的なことを考えており、思考に思考を重ねるだけでなくそれを証明しようと日夜はげみ、トライアンドエラーの局地にいるのだということ。
わたしは今後も、物理学者や数学者の新たなる発見を「ほげ〜」とアホズラで眺めることになるが、彼らの研究の先の未来を一緒に眺められるくらいの教養をつけたいと思った。

あの数学の先生、元気かな。
わたし、ちょっとだけ数学好きになったよ。


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