固定ライトタッチVS対人ライトタッチ
▼ 文献情報 と 抄録和訳
固定ライトタッチおよび対人ライトタッチ接触時の姿勢制御の特徴と対人姿勢協調の関与について
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的・仮説]
指先の軽いタッチによる触覚フィードバックは、姿勢の向きによって人体の姿勢制御に影響を与える。そのため、接触する物体の特性によって姿勢制御が異なる可能性がある。接触対象としては、固定物(fixed light touch: FLT)と個人(interpersonal light touch: ILT)が主に実験されているが、FLTとILTの姿勢制御特性は同一研究内で直接比較されたことはない。また、これらの条件下での周波数特性を比較した研究もない。我々は、(1)FLTでは姿勢動揺の周波数が高く、ILTではそのような変化は見られない、(2)ILTに特有の対人姿勢協調、すなわち相手の動揺に似た動揺は高周波成分(>0.4Hz)ではなく低周波成分(≦0.4Hz)で観察されるという仮説を立て、この仮説を検証した。
[方法]
成人被験者による閉眼タンデム立位を標準条件とし、ノータッチ、FLT、二足歩行パートナーとの安定ILT、タンデムパートナーとの不安定ILTの4つの立位条件を行った際の圧中心を測定した。
[結果]
FLT条件、安定・不安定ILT条件ともに姿勢も安定するが、FLT条件での安定性が優れていることが示された。さらに、軸による姿勢の安定性の違いは、速度についてはどの条件でも明確ではないが、振幅については、前後(AP)軸よりも内側-外側(ML)軸の方が接触による安定化をとらえやすいことがわかった。平均パワー周波数(MPF)は、FLT条件では無接触条件、ILT安定条件よりもML軸で高く、AP軸では他のどの条件よりも高い。さらに、両軸の安定したILT条件は、no-touch条件と有意な差はなかった。また、AP軸の不安定ILT条件も、ML軸は非接触条件より高かったが、有意差はなかった。安定ILT条件、不安定ILT条件ともに対人姿勢協調性は低周波成分で見られ(不安定ILT条件のML軸を除く)、高周波成分では見られなかった。
[結論]
これらの結果は我々の仮説を支持し、FLTとILTはある程度姿勢動揺を抑制する効果を発揮するが、実際には低周波成分に基づく姿勢協調により、周波数領域で異なる姿勢制御をもたらすことが示唆された。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
✅この論文はこちらの記事でも紹介されています。
https://www.kio.ac.jp/nrc/press_20211217
個人的に興味深いと思ったのは、運動イメージ能力の差異における、対人ライトタッチ時の姿勢制御の違い、である。今回は健常成人が対象であるから、恐らく運動イメージ能力の差異は大きくないと思われる。仮説として、「対人の姿勢制御を感じ取る能力≒運動イメージ能力」と考えると、姿勢制御にも変化が生じるのではないかと感じた。とても興味深い論文である。
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
#理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #論文 #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #ARI #ミントライム
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
本マガジンを始めた経緯や活用方法はこちら
↓↓↓
医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥