長時間の運動イメージによる弊害
▼ 文献情報 と 抄録和訳
長時間の運動イメージによる精神的疲労は、努力の認識と運動領域の活動を増加させる
Jacquet T, Lepers R, Poulin-Charronnat B, et al.: Mental fatigue induced by prolonged motor imagery increases perception of effort and the activity of motor areas. Neuropsychologia. 2021;150:107701.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 最近の文献によると、運動イメージ(MI)は長時間続けると精神的疲労を引き起こし、その後の身体運動に悪影響を及ぼすことが示唆されている。本研究の目的は、この可能性を神経生理学的および自己報告的な尺度で確認することであった。
[方法] 13名の参加者は、200回のイメージによる等尺性膝伸展収縮を行った後(MI延長条件)、ドキュメンタリー番組を視聴し(対照条件)、実際に150回の等尺性膝伸展収縮を行った。脳波を連続的に記録し、Cz電極における運動関連皮質電位の振幅(MRCP,運動野の活動の指標)を、イメージ収縮と実収縮のそれぞれについて求めた。外側広筋の筋電図と、長時間のMI、ドキュメンタリー番組の視聴、実際の収縮に必要な知覚的努力を測定した。
[結果] 長時間の筋トレ中に、精神的疲労度、収縮をイメージするのに必要な努力、MRCPの振幅が時間とともに増加した。収縮をイメージするのに必要な労力の増加は、MRCPの振幅と有意な相関関係があった。運動では、条件×時間の有意な交互作用により、MIを延長した条件では、対照条件に比べて知覚的努力が時間とともに増加し、外側広筋のEMG RMSに特異的な変化が見られた。
[結論] これらの変化は、実際の収縮時に精神的疲労がある場合に観察されたものであり、MIを延長した場合に観察されたものと合わせると、MIを延長することで、想像や実際の収縮に必要な運動指令が損なわれる可能性が示唆される。精神的疲労がMRCP振幅に及ぼす影響はMI中に明らかになったが、今後の研究では、運動誘発性の力産生能力の低下を最小限に抑えるように運動を調整し、精神的疲労の存在下でMRCP振幅に及ぼす交絡効果をコントロールする必要がある。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
運動イメージにこのようなデメリットがあるとは知らなかった。そして、ここでいう”長時間”には大きな個人差があるように感じた。
今回の研究では、誰でも精神的疲労を感じるであろう時間のMIを行っているが、その中でも早期に精神的疲労を感じていた者もいた可能性がある。それに、臨床現場における高齢者や脳卒中患者など、運動イメージ能力の低下が生じやすいケースでは、場合によっては短時間の運動イメージでも精神的疲労が生じてしまうのでは?と感じた。この辺も今後の研究で明らかになってくると面白い。
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