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[英論抄読】高齢者における身体機能の過大評価

▼ 文献情報 と 抄録和訳

障害物を乗り越える際の身体能力の自己推定は視覚的高さ知覚に媒介されない:若年者と高齢者の比較

Sakurai R, Fujiwara Y, Ishihara M, Yasunaga M, Ogawa S, Suzuki H, Imanaka K. Self-estimation of physical ability in stepping over an obstacle is not mediated by visual height perception: a comparison between young and older adults. Psychol Res. 2017 Jul;81(4):740-749.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的]
高齢者は、自分の踏み台昇降能力を過大評価する傾向がある。しかし、その原因が身体能力の不正確な自己推定によるものか、身長の不正確な認識によるものかは不明である。そこで、若年者と高齢者の視覚的な身長知覚能力と踏み台昇降能力の自己推定を測定した。

[方法]
✓高齢者47名と若年者16名を対象に、高さ知覚テスト(HPT)と踏み台昇降テスト(SOT)を実施した。
✓参加者は、HPTでは7mと1mの距離から縦棒の高さを視覚的に判断し、SOTでは踏み台昇降動作を自己推定し、その後、実際に踏み台昇降動作を行った。

[結果]
✓視覚的高さ知覚において若年者と高齢者の間に有意差は認められなかった。
✓SOTでは、若年成人は自分の踏み台昇降能力を過小評価する傾向があったが、高齢者は自分の能力を過大評価するか、若年成人に比べて過小評価する程度が小さかった。
✓視覚的高さ知覚は、若年者、高齢者ともに踏み台昇降能力の自己推定値と相関がなかった。

[結論]
これらの結果は、一部の健康な高齢者に見られる踏み台昇降能力の自己過大評価は、視覚的高さ知覚の性質によるものではなく、身体能力の自己評価それ自体が加齢に関係すると考えられるなど、他の要因によるものである可能性を示唆するものであった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅身体機能の過大評価に関しては、他の論文では以下のように述べられている。

高齢者は加齢に伴う身体機能の低下を自覚しておらず、踏み台昇降能力を過大評価する傾向がみられた。加齢に伴う踏み台昇降能力の低下、さらに重要なことは、この能力の過大評価または過小評価の減少の両方が、転倒の潜在的なリスクを高める可能性があることである。
Sakurai R, Fujiwara Y, Ishihara M, Higuchi T, Uchida H, Imanaka K. Age-related self-overestimation of step-over ability in healthy older adults and its relationship to fall risk. BMC Geriatr. 2013 May 7;13:44.

高齢者における踏み台昇降テストの過大評価は、不活発なライフスタイルと相関する可能性があることが示唆されたが、実行機能は転倒者においてのみ過大評価にさらに影響を与えることが示された。
Sakurai R, Fujiwara Y, Sakuma N, Suzuki H, Ishihara M, Higuchi T, Imanaka K. Influential factors affecting age-related self-overestimation of step-over ability: focusing on frequency of going outdoors and executive function. Arch Gerontol Geriatr. 2014 Nov-Dec;59(3):577-83.

健常高齢者では、自分の機能低下を見落とすことは、前頭前野、特に両側眼窩前頭皮質にの代謝活性の低下に影響されている可能性がある。また、両側眼窩前頭皮質の機能低下は、高齢者が低下した身体能力の質的・量的な値を更新することを妨げていることも示唆された。
Sakurai R, Fujiwara Y, Yasunaga M, Suzuki H, Murayama Y, Imanaka K, Kanosue K, Ishii K. Neural correlates of older adults' self-overestimation of stepping-over ability. Age (Dordr). 2016 Aug;38(4):351-361.

私たちにできることは、高齢者が身体機能を過大評価しやすいことを”認識”し、それを適切に”評価”でき、過大評価の原因になるものに対して、”アプローチ”ができる、ということだろう。

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