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”呼吸法”によって術後の痛みを予防する
▼ 文献情報 と 抄録和訳
呼吸や痛みに気を配ることー人工関節置換術患者に対する2つの術前マインドフルネス手法の比較
AW Hanley, J Gililland, EL Garland: To be mindful of the breath or pain: Comparing two brief preoperative mindfulness techniques for total joint arthroplasty patients. J Consult Clin Psychol. 2021;89(7):590-600.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的] 関節全置換術(TJA)は痛みを軽減し、機能を改善することが多いが、慢性的な痛みの発生や術後のオピオイド使用の危険因子でもある。このような術後の不都合な結果を防ぐために、TJA患者はより優れた非薬理学的な疼痛管理戦略を必要としている。本研究では、マインドフルネスに基づいた2つの有望な疼痛管理法を比較した。
[方法] 我々は、整形外科クリニックにおいて、膝または股関節のTJAを受けた患者を対象に、単一施設、3群、並行群の無作為化対照試験を実施した。TJA患者(N = 118、男性年齢 = 65、女性 = 73、白人 = 110)は、手術の約3週間前に、術前のマインドフルネス・オブ・ブレス(MoB)、マインドフルネス・オブ・ペイン(MoP)、または認知行動療法による痛みの心理教育(CB)のいずれかに無作為に割り付けられた。それぞれの介入は、2時間の術前教育プログラムの中で、1回20分のセッションで行われた。痛みの強さの変化が術前の唯一の結果であった。術後の成果として、痛みの強さ、痛みの干渉、オピオイドの使用を、術後2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目に評価した。
[結果] MoBは術前の痛みのスコアを最も効果的に減少させることがわかり、F(2, 89) = 5.28, p = 0.007、一方、MoPは術後の痛みの強さが最も少なく、F(8, 94) = 3.21, p = 0.003、痛みの干渉はF(8, 94) = 2.52, p = 0.016)であった。MoBとMoPはともに、CBに比べて術後のオピオイド使用量を減少させた、F(8, 83) = 16.66, p < 0.001。
[結論] 術前の短いMBIは、術後の痛みとオピオイド使用の両方を予防できる可能性がある。さらに、本研究で使用したMBIは実現性が高く、ほぼすべての医療従事者が実施可能であり、その簡潔さから診療時間も最小限で済む。このように、MBIを外科治療のパスウェイに組み込むことは大きな可能性を秘めています。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
呼吸法によって疼痛が軽減する。皆さんは”怪しい”と思うだろうか。以下の文献を参照してほしい。
こうしたレビュー論文に挙げられるように、今まで”スピリチュアル”っぽく捉えられていた(ように私は感じている)呼吸法が、”科学的”に捉えられるようになってきた。私が考える、疼痛治療における”呼吸法”の使用場面を以下に示す。
・急性期での疼痛全般(認知機能が良好であることが条件)
・慢性疼痛において、組織学的にも力学的にも疼痛の原因がはっきりしない場合
こう考えると、適応となるケースは結構多いと思う。ただ慢性疼痛において大切なのは、組織学的・力学的に疼痛の原因をしっかり評価することを第一選択とすることである。そして呼吸法によって疼痛の部位や性質が集約化されてきた場合は、再度、組織学的・力学的に疼痛の原因を評価することである。『補助的だが、有効な一手段』として、呼吸法を活用していきたい。
どう治すではなく、どこを治すか
林典雄
本質は見失わず、補助的手段を有効活用していきたい。
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最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。
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