記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「ライフ・イズ・ビューティフル」~あなたが輝くための秘密がある~

ナチスによるユダヤ人迫害が激化する第二次世界大戦下。陽気なユダヤ系イタリア人のグイドは、愛する家族とともに強制収容所へ送られる。そこで彼を待っていたのは、想像を絶する過酷な現実だった。しかし、グイドは幼い息子の心に希望の光を灯し続けるため、この現実が「ゲーム」だと説得する。絶望の淵で父が貫いた愛と希望の物語は、私たちに生きることの意味を問いかけるのに違いない。

あらすじ

 悲惨な題材(ホロコースト)を扱いながら、なぜ、ロベルト・ベニーニ監督は「ライフ・イズ・ビューティフル」を「喜劇」として描いたのだろうか?

〔ホロコースト〕
ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺。ヒトラー率いるナチスは1933年に権力を握り、欧州のユダヤ人絶滅を計画した。5年後、ユダヤ人の商店や礼拝所などに対する一斉襲撃事件「水晶の夜」を引き起こし、取り組みを本格化。アウシュビッツやマウトハウゼンなどの強制収容所で毒ガスや銃などを使って推計600万人を虐殺した。

引用:共同通信ニュース用語解説(コトバンク)

 一つは、観客に悲劇的な状況を直視させないためもあるでしょう。もう一つは、喜劇として描くことによって悲劇をより際立たせる効果を狙ったのかもしれません。更に私は監督の別の意図を考えてみました。

 喜劇俳優のチャールズ・チャップリンは「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」という名言を残しています。

 この言葉の解釈の一つに、物事の近視眼的な捉え方は状況判断を誤る可能性が高く、視野を広くして客観的に眺めれば、より良い判断が出来るという考えがあります。視点を変えれば、物事の捉え方が変わるのです。

 変わらぬ状況の中で、見方を変えることによって、物事の捉え方がいかに変化するか。この映画は、それを喜劇という形で鮮やかに描き出したのです。「視点を変える」ことによって、絶望の中でも「ライフ・イズ・ビューティフル」と肯定する知恵が生まれるのです。

 例えば、強制収容所に移送された映画の主人公・グイドは、息子のジョズエに「これはゲームなんだ」と嘘を言います。悲惨な現実を息子に気づかれないようにするためでした。その言葉によって、ジョズエの視点から捉えられた強制収容所は「冒険と楽しみの場」に変化するのです。

 ゲームに勝てば「本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」と鼓舞し、息子をこの辛い現実から解放させるための努力を続けます。周りの援助とジョズエ自身の幸運もあって、彼は生き延びていくのです。

 私達も人生をゲームとして捉えることがあります。「人生ゲーム」という
ボードゲームも発売されています。そのシュミレーション・ゲームを通して「視点を転換する」メリットを疑似体験するはずです。

〔人生ゲーム〕
アメリカ発祥のボードゲーム。1960年発売。双六に似たゲームで、ゲームの序盤で職業が決められ、サイコロの目にしたがってコマを進め、止まったマスの指示に従い、結婚・出産・交通事故など、さまざまなライフイベントを経験しつつゴールを目指す。日本では1968年にタカラ(現・タカラトミー)が発売してヒット。

引用:デジタル大辞泉プラス(コトバンク)

 最後に、タイトルのエピソードについてお伝えします。監督のロベルト・ベニーニは「ライフ・イズ・ビューティフル」を制作したのは、ロシアの革命家・レフ・トロッキーの言葉に触発されたからだと述べています

人生は美しい。未来の世代をして、人生からすべての悪と抑圧と暴力を一掃させ、心ゆくまで人生を享受せしめよ。

レフ・トロッキーの言葉

 悲劇的な内容を描きながら「ライフ・イズ・ビューティフル」というタイトルにしたのは、どんな状況下でも視点を変えれば「人生は美しい」と捉えられるという、監督のメッセージだと思うのです。今、あなたにとって「人生は美しい」ですか?

〔以下、映画関連の情報です〕

〔視点を変えるための参考書籍〕