【火傷の治療に川魚】ブラジルではティラピアの皮で火傷治療するぞ

むかし、相撲取りが外傷を負ったときにその部位に玉子の薄皮を貼り付けるという話を聞いたことがあって、実際に直りやすいという。最近では湿潤療法というのがあって、傷は乾かすよりもしみ出した体液を利用して治癒能力を活用して、治りが早くなる。

いまでは薬局においてあるキズパワーパッドなんかがそれだけれど、火傷の応急処置として、ワセリン塗ってラップを巻くというのを聴いたことがある。ワセリンは合成品なので、生薬由来のような拒否反応が出にくいというのもあるそうな。

後は生物の生成物だとやはりよくきくようで、鯉の切り身とか、アロエを張るっていうのも昔から聞いていた。


Surgival Case Reportsに掲載された研究に、新しい火傷治療として淡水魚のティラピアの皮を使っている。ティラピアはアフリカ原産の淡水魚でブラジルの河川に多く棲息している。

研究者達は皮膚移植の際にこの皮を使って治癒実験をしている。2019年、この異例の治療法の症例報告として記録されており、火薬の爆発による火傷の治療に有効であったとのこと。

I型コラーゲンの含有量が多く、引っ張り強度があり人間に似た形態をしているおかげで、理想的な絆創膏になり得る。傷口から水分やタンパク質が失われるのを防ぎ、傷口が治るまで傷口に密着している。これによって、傷の回復を早め、汚染から保護することができる。

この研究では腕、顔、胴体に火傷を負った23歳の男性がティラピアの皮で回復した事例が紹介されている。まず、ティラピアの皮は科学的に殺菌され、グリセロールで処理され、放射線照射された後、細菌や真菌の検査が行われ、感染のリスクを抑えるために冷蔵した。

男性の腕の火傷は洗浄し、壊死した組織や繊維質の組織を取り除いた後、処理したティラピアの皮をその上に張り付けた。そして、ブラジルで火傷患者によく使われている銀スルファジアジンクリームを塗り、ガーゼと包帯を巻いて、最初の1週間は72時間ごとに外して、ティラピアの皮が火傷部位に密着しているかを確認した。



12日目と17日目には、右腕と左腕でそれぞれ上皮化(新しい皮膚のバリアが形成される)がおこった。この時点で火傷部分から乾燥して緩んだティラピアの皮を剥がしたら、治癒した皮膚が現れた。副作用は見られなかった。


一般には皮膚移植はヒトやブタ、カエルの皮膚などが使われてきているが、ブラジルの公立病院では常に使える状態ではないらしい。そのために定期的な交換が必要になるガーゼ包帯を使うことがほとんどであるという。ガーゼ包帯はくっついちゃうから剥がすときも痛そうだ。

しかし、ブラジルの皮はティラピアが大量に棲息しているので、持続可能な代替品となり得るという。しかも、費用は人件費輸送費を除けば、パッチ1枚につき1ドルで済む。

日本の河川でこれに変わる魚はいないものか。ただ、日本の場合はそれなりに医療は充実しているので、もっと最適な治療ができるかもしれないけれど、日本の淡水魚で代替が可能な魚を把握しておくのも、いつかは役に立つかもしれない。鯉なら沢山いるんだけどなぁ。


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