科学と神話の連想ゲーム Vol.1 「アモルファスと黒曜石」
執筆:ラボラトリオ研究員 村上 卓
今回の内容は、株式会社ファーストペンギン様のご協力によりラボラトリオが開催している講座『Gコード』において、すでにお伝えしている内容と一部重複しております。あらかじめご了承ください。
今回から「科学と神話の連想ゲーム」と題しまして、科学雑誌『Newton』から気になった記事をピックアップし、神話と連想ゲームをしていく連載を始めさせて頂きます。
『Newton』2020年7月号に、ガラスに関する特集ページがありました。ガラスから連想したのは、白川神道で鎮魂をするときに利用する鎮魂石のこと。鎮魂石は黒曜石で作られており、黒曜石はガラス質であるということを連想しました。
そこを起点にして、色々と連想ゲームしてみました。
連想ゲーム:神話知
ガラスといったら、黒曜石
黒曜石といったら、鎮魂石
鎮魂石といったら、宇宙
宇宙といったら、天之御中主神
【解説】
私たちが実践している白川神道では、鎮魂をするときに黒曜石でできた鎮魂石を見つめながら行います。鎮魂とは、いわば日本古来から伝わる瞑想方法。私はガラス特集を読んだときに「そういえば黒曜石ってガラス質だったな」と連想しました。
鎮魂する際に、この鎮魂石を宇宙そのものと見立て、自分自身を宇宙を産み出す創造主として捉え、深く瞑想状態に入っていきます。やがて自分自身が宇宙と一体化し、私という自我が消失し、神と一体になります。そこにはもう「私」は存在せず、あるのはただ公のみ。
そして、この宇宙を創造するお働きに対して、神話の世界で名付けられた最初の神が、天之御中主神という神様なのです。
このような連想ゲームが、私のなかでほんの一瞬の出来事として、頭を巡ったのです。
連想ゲーム:科学知
ガラスといったら、アモルファス
アモルファスといったら、非結晶
非結晶といったら、固まった液体
固まった液体といったら、第五の相
【解説】
ガラスは、アモルファスという特殊な性質を持っています。通常の固体は結晶構造を持って組成されていますが、ガラスに関しては、結晶化せずに、非結晶状態で固体化します。
この性質は、ダークマターなどと並んで、現代の最新物理学でも解明されていない謎の現象のひとつなのです。
『Newton』ではこの状態について、「固まった液体」という、なんとも興味を惹かれる表現方法を用いて説明されていました。
私はこの表現をみて、「ガラスっておもしろい!」と思い、今回の連想ゲームが始まったのです。
非晶質状態とは、結晶の様に一定の構造にはならずに、ランダムな状態で固体化したもの。わたしはすぐに宇宙始原の対称性のある状態を連想しました。
最先端の物理学では、宇宙の始めは非常に高圧・高温な状態で、プラスとマイナスの様な物質がランダムに飛びかい、互いを打ち消し合って総じてプラス・マイナス・ゼロのような真空状態であったと考えられています。
このとき何かのきっかけでこのプラスとマイナスのバランスが崩れて宇宙が急拡大する事象をビッグバンと言います。このバランスが崩れることを「対称性の破れ」とも表現します。つまり、バランスを崩したからこそ宇宙が誕生したわけで、その前はバランスが取れた状態、対称性のある状態だったことになるのです。
そこで私の頭のなかでは、非晶質状態と対称性のある宇宙始原の状態とが連想ゲームによって繋がったわけです。
また、プラズマ宇宙論によると、宇宙の99.9%はプラズマであるとされます。プラズマは、固体・液体・気体につづく、第四の相とも言われています。これを反転させて考えると、固体・液体・気体はこの3つの状態を合わせても、宇宙の中の0.1%に過ぎないことになります。
このように考えると、私たちが慣れ親しんでいる、固体・液体・気体の状態は、実は宇宙全体では非常に稀な状態だと言えますよね。
そして、「固まった液体」を液体と固体の中間の状態と捉えると、第五の相と言っても良いのではないかと連想しました。固体・液体・気体の三態で宇宙全体の0.1%であるならば、第五の相は更に稀な物質だと言えます。
ガラス特集をきっかけに、科学的な連想ゲームを繰り返したところ、ガラスとは宇宙でも極めて稀な物質であり、その構造は宇宙始原の状態にも近しく、何やら意味がありそうだな、と思ったのです。
科学が発展することにより、例えば温度とは物質を形成する分子や原子の振動している状態だと捉えるようになりました。分子や原子が激しく動いている状態が温度が高い状態で、逆に動きが少ない状態が温度が低い状態です。
この概念により、実は温度というものは幻想だったことが分かりました。私たち人間は、対象となる物質の振動の激しさを「温度」として感じているだけだったのです。
このように、プラズマの対極として固体を捉えてみることや、温度というものは人間の主観に過ぎないのではないか、というような既成概念から離れて自由に発想することは新たなる概念を創造する際に、非常に有効な手段だと思います。
このように融通無礙な発想を行う時に、一見すると不可解な神話のストーリーがアナロジーとして有効なことが多いのです。
連想ゲーム:科学知と神話知の結び
神話知 :ガラスで出来た黒曜石は天之御中主神を想起させた
科学知 :ガラスとは稀有な物質でその構造は宇宙始原の状態に近しい
上記の二極から得られた発想を、さらにアナロジーとして結びつけて連想ゲームした結果、以下のようなストーリーができあがりました。
宇宙全体は第四の相のプラズマで満ちている。それらが鎮まっていく中で、気体、液体、固体となって物質化していった。そうして誕生した地球という惑星に、さらに稀な条件で誕生した、ガラス質の黒曜石。
この黒曜石は太古の世界から、鎮魂石と名付けられて、鎮魂するときに利用されてきた。その鎮魂石を宇宙そのものとして見立て、宇宙を創造する根源神である天之御中主神と見立ててきた。これは単なる偶然だろうか。
さらに白川神道では、この天之御中主神を銀河中心のブラックホールと見立てることをする。宇宙始原の高圧・高温状態はブラックホールの中心を連想させる。またブラックホールという言葉は、黒曜石の黒を連想させて・・・と、連想がスパイラルしていく。
まさにガラス質で黒く輝く黒曜石は、宇宙全体、そして宇宙を凝縮したような存在であり、それを見つめながら鎮魂をし、宇宙創造の根源神である天之御中主神を迎えることは、科学的に見ても理にかなったことではないか。。と、ここまで連想ゲームした訳です。
一般的には、科学と神話とは対極にある考えで、神話とは誰かが勝手に主観的につくった、客観性のないただの物語に過ぎず、とても非科学的な考え方だと思われているフシがあります。
ただ、ここでご紹介したように、実は科学と神話とはその深遠なる世界で、相通じるものがあるのです。
科学はなるべく主観を排除し、客観的であることを是とする傾向があるかと思います。これはこれで有用なのですが、あまりにも客観世界に寄り過ぎると、主体性がなくなってしまい、ついには人間が科学に支配されてしまい、AIによる人類の支配なんていう発想にもなりかねません。
自然科学の最先端である物理学では、極々微小な物質を研究するため、ほんのすこしのノイズも許されないような非常に繊細な実験をおこなっています。そしてこの世界では非常に面白いことに、それらの微細な実験においては、実は人間の主観や意識といったものが、実験結果に影響を与えるとされているのです。
人間性原理と言ったりもしますが、このあたりとても面白い感覚だと思います。
最終的には、科学と神話とで、双方から見てピタリと一致する真理を人類は掴む必要があると思っています。なぜならば、科学とは本質的に対象を分解、分析していく考え方であり、全体を統合するという逆の流れを行うことは本質的に難しいからです。そしてこの統合する流れがないことで、主義主張がぶつかりあったり、人間と環境が分離したりして、戦争や環境破壊を止めることができないと思うからです。
戦争や環境破壊をこのまま続けたら、人類の未来はないと、誰でも簡単に想像できますよね?ですので、私たちParoleを運営するラボラトリオでは、このような最新科学と神話知との融合から、人類の進むべき道を指し示す、新しい概念を創造しているのです。
これは、最新と最古の融合ともいえることで、時間を超越する世界観でもあります。
その際には、一見すると非科学的とされる、アナロジー、連想ゲームが非常に有効な手段になりえるのです。
この考え方は、Paroleの記事でも好評を頂いている、最新数学の理論でもある京都大学の望月教授が発表されたIUT理論にも通じる考え方です。
ということで、皆さんも科学と神話の連想ゲーム、やってみませんか?
今後も『Newton』の記事から気になったキーワードを元に連想ゲームをおこないたいと思います。
白川では
「ふと思うは、神心」
という言葉があります。ふとした瞬間に出てくるアイディアは、神レベルの真理かもしれませんよ。
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【村上 卓 プロフィール】
netenのシステム・エンジニア。
高校の時に物理の先生の薦めで量子力学の書籍を読み、非常に衝撃を受けた。そこに人智を超えた神の世界を感じ取ったのですが、この世界にハマったら帰ってこれなくなる、と思い工学部の情報系の道に。物理の先生からは非常に残念がられましたが、人生とは不思議なもので、いつの間にかこちらで物理にも関係する記事を書かせて頂くことになりました。
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