縄文人に見る “祈りと感謝” の精神文化〜その6〜
執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰
縄文社会が築きあげてきた自然循環型の文明は、地域社会そのものが『個』として自立していく小規模分散型の、ネットワーク文明へと受け継がれようとしている。
かつて宗教学者の中沢新一と音楽家の坂本龍一が、持続可能社会へのカギが見つかるかもしれない、と考えて環状列石(ストーンサークル)で知られる青森県小牧野遺跡を訪れた。小牧野遺跡は、約4000年前、縄文後期前半の遺跡である。環状列石は、祭祀場と考えられており、「広場の周縁は石垣状の列石に囲まれているので、さながら円形劇場のような空間効果を演出している」と説明板に書かれている。その環状列石を前にして坂本龍一は、こう言ったという。ちょっと長いが、以下引用する。
「環状列石の中にいると、石を運んできてお祈りしている人たちの姿が見えるかのようで、不思議な感覚になりますね。三内丸山遺跡よりも一歩進んだ宗教心の在り方で、国家寸前まできている気がします。僕は直感的に、環状列石というのは天を地に模したものだという感じがしたんですが、ただ岩を拝んだりするのとはちょっと違って、天上の世界を人工的につくろうとしていると思う。そして一般人は土葬なのに、何十年かに一人の特別に選ばれた人間だけが、土器棺に入れられて埋葬されている。一人の人間が自然のパワーを象徴するようになって、集中した権力を持っているということで、ほとんど天皇制直前のカタチに思えます」。
こう言った坂本龍一に対して、中沢新一は違った観点から重要な視点を提示した。
出典:http://hirosakisanpo.asablo.jp/blog/2015/05/21/7638570
続けて、こちらも長いが、以下引用する。
「国家がいつ生まれてもおかしくない状態にあるのに、そうならなかったのは、国家の発生を抑える何かがあったってことでしょう。アメリカ大陸の場合、インカやマヤなんかは国家ができたんだけど、わりと短命ですよね。もともとアメリカ大陸の先住民族はモンゴロイドですから、中国で高度な文明をつくった人たちと同じ起源をもっている。だからDNAの中には国家を造る要素もあって、いったんは国家形成の方向に向かったのに、それを解体しようとする精神性も非常に強かった」
なんとも不思議だ。国家を造り、権力を高め、壮大な事業に乗り出すことに積極的な人たちがいる一方で、あえて国家を造ろうとしない人たち、国家ができそうになると、それを解体の方向に押し戻そうとする人たちがいたのではないかというのだ。その見方が正しければ、ここ小牧野遺跡は、国家を造ろうとはしなかった人たちが残した遺跡ということになる。私たちは、国家を造った側が、国家を造らなかった側を支配し、抑圧し、飲み込んでいった歴史しか知らない。一方的にやられっぱなしの側に自ら進んで回るなど、とても考えられない。それとも国家を造ることで何か失うものがあるということなのか。裏を返せば、国家を造らないことで得られるもっと大事なものがあるというのだろうか。(つづく)
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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】
◎立命館大学 産業社会学部卒
1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
1990年、株式会社 JCN研究所を設立
1993年、株式会社CSK関連会社
日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
マーケティング顧問契約を締結
※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。
◎〈作成論文&レポート〉
・「マトリックス・マネージメント」
・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
・「コンピュータの中の日本語」
・「新・遺伝的アルゴリズム論」
・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
・「人間と夢」 等
◎〈開発システム〉
・コンピュータにおける日本語処理機能としての
カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
・TAO時計装置
◎〈出願特許〉
・「カナ漢字自動置換システム」
・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
計測表示できるTAO時計装置」
・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等
◎〈取得特許〉
「TAO時計装置」(米国特許)、
「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等