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癌の効用

1. 早期発見・・少しでも不安があったら・・
2. 癌と診断されて変わった日常生活
3. 癌と診断されて初めて気付いたこと
4. 癌は心身全体のシステムの現象/「病」
5.癌に対する向き合い方の第一歩は、自分自身と向き合うこと

1. 早期発見・・少しでも不安があったら・・

某ヴィパッサナ瞑想10日間合宿でのこと。トイレが少ないので、休憩時間に列ができるのです。ふと、気付きました・・となりのひとよりも私は遅い!私の後ろに並んだひとはかわいそうに・・と。そのことを綜合内科の主治医に言うと、直ぐに泌尿器科の診断を設定してくれました。検査の結果、前立腺肥大症でした。薬物療法で対処しました。
その後、翻訳の仕事で、大きなプロジェクトに参加し、週7日、毎日朝から夜遅くまで、休みなしに仕事をしてました。数年続きました。

2022年1月の検査で、ステージⅡの前立腺癌が発覚。ロボット手術「ダビンチ」を受けました。機能を残すために全摘出ではなく、一部分残しました。3ヶ月毎の定期検査。しばらくは大丈夫だったのですが、全摘出でなかったこともあり、次第にPSA値が上昇。医師はホルモン治療を提案したのですが、長期海外渡航予定だったので、放射線治療に。毎日、病院に通う日々。PSA値は劇的に下がりました。

予定外の一時帰国で、半年ぶりにPSA検査すると、値は9ヶ月間変わっていないことが判明。ほぼ完治に近い状態ですが、癌なので念のため定期検査は続けていく方針とのこと。全摘出でなかったので、放射線治療することになりましたが、おかげで、機能はまったく正常のまま(前立腺肥大時よりも良好に回復)、ほぼ完治しました。

私の場合、綜合内科の主治医のお陰もあり、早期発見できました。少しでも不安があったら検査することの重要性を認識しました。

2. 癌と診断されて変わった日常生活・・

前立腺肥大症と前立腺癌とは似て非なるもの、まったく違います。癌と診断された時は、正直ショックでした。仕事のし過ぎとか、運動不足とか、食生活など、反省点はたくさんありました。

仕事内容は大好きだったのですが、幸か不幸か、機械翻訳・言語処理の翻訳もたくさんやっていたのですが、”Google翻訳”のように、すぐれた自動翻訳システムが実用レベルになることによって、関係していたプロジェクトのクライアントが機械翻訳を全面採用したこと・この関係の仕事が減ったのをきっかけに、長い翻訳者人生にけじめをつけ、収入は別にして、これからは自分のやりたい内容の翻訳をやるだけでいいかな、と思ってます。

運動不足は、意識して、毎日の散歩をルーチンにしたり、太極拳や水泳をやったりして対処してます。

食生活は、糖尿もグレイゾーンなので、とても気を付けるようになりました。当然、煙草・アルコールはまったく飲まず、添加物も極力避けてます。理想、ビーガン・ベジタリアンですが、柔軟に肉・魚・乳製品も食べますし、時にはインスタント食品もOKにしてます(いまのところ)。
若い頃から続けていたことですが、Reikiという健康法を主に、愈気・気功も、前立腺癌の治癒に少なからず貢献したと思います。瞑想に対しても、しっかり向き合うことができました。

3.癌と診断されて初めて気付いたこと

癌と診断されて初めて気付いたことは、他でもない自分自身の「死」がリアルに現実味を帯びたことです。幼児PTSDのお陰で、かなり小さい頃から自分自身の「死」を想ってきましたが、癌という具体性を突き付けられるのとはまったく違うことに気付きました。
ソクラテスの「哲学は死の練習である」とか、memento mori (死を想え)」とか、言葉では知ってましたが、現実の重みは絶対的とも言える程違います。

「自分は何のために生きているのか」「自分は何なのか」「自分の人生は何だったのか/何なのか」・・と言った難問とリアルに対峙しました/しています。幼児PTSD故持たされた「存在」「実在」の難問も、自分の中で、パルス状にレベルアップしました。

癌は確かに怖い病気です。身の回りでも、何人も癌で亡くなってます。超スピードで進行して死に至るひとも少なくないです。かと言えば、一般的には進行が早くて、致死確率が高い癌であっても完全治癒した友人もいます。私の場合は上述のように幸運でした。体の異常に初めて気付いたのが瞑想合宿ですので、瞑想と、綜合内科の主治医が、直接的に、癌の順調な治療につながりました。

真の意味での”philo-sophia”「哲学」に関心を持ち続けて来ましたが、前述のように、「哲学は死の練習である」を文字通り肉体的にも『練習』することができる環境を癌宣告によって得られたわけです。癌に感謝。
つまり、自分の人生全体に対して、客観的に観ることができる契機に癌がなったわけです。これは、癌という絶対的具体性故、いくら知識レベルで高い、深層レベルで深いレベルに達したとしても、なしえない意義なのだと思います。

4. 癌は心身全体のシステムの現象/「病」

ここ数年、癌と付き合って感じたことですが、癌は、いいとか、わるいとかいうレベルの問題ではなく、体の一種の防御反応なのかと思います。日常的に増え続ける放射能、化学物質、猛暑・台風などの異常気象ストレス、職場・学校・家庭などの日常的ストレス、他者・自己自身に向き合う対人・対自己ストレス、IT・SNSなどからの情報洪水ストレス等等、現代社会は個人のストレスレベルが急激に上昇している社会なのでしょう。現代医学では、私のように前立腺癌とか、知人・友人のように白血病・喉頭癌・肺癌・胃癌といったように、局所的に対症療法で治療していきますが、癌の本当の原因は局所ではなく、体の心身全体・生活全体、ひいては社会全体にあるのでしょう。そんなストレス社会に対する心身全体の防御・反応システムのひとつが癌という『病』なのではないでしょうか。

5. 癌に対する向き合い方の第一歩は、自分自身と向き合うこと

ですので、癌に対する向き合い方の第一歩は、自分自身と向き合うことではないでしょうか。癌と宣告されたら、それは自分自身と向き合いなさいというメッセージなのだと思います。
  癌・・気付かせてくれて、ありがとう・・と。

          写真は、トルコ・イスタンブール・カドキョイ
    15.Sep.24 JP.


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