新たな空間デザインのパイオニア。花屋の設計から切りひらいた開拓地とは?
職場には面白い人がたくさんいます。考えが面白い人、経歴が面白い人、人間性そのものが面白い人。今後noteでもご紹介していきたいと思うのですが、まずはparkERsのデザインの根幹を築いたこの方を紹介しなければ!ということで、ある方をご紹介したいと思います。
新しい空間デザインの形を確立した、parkERsのクリエイティブディレクター城本さんです。
城本栄治(Eiji Shiromoto)
parkERsのクリエイティブディレクター。1968年広島県生まれ。ICSカレッジオブアーツにてデザインを学んだ後、内装設計会社でアパレルなどの店舗デザインに携わる。2002年(株)パーク・コーポレーションに入社。国内外で約100店舗ある「青山フラワーマーケット」の店舗デザインを手がける中で、「デザイン性×専門性(グリーン)」という新しい分野を確立。2013年には空間デザインブランド「parkERs」をブランドマネージャーの梅澤とともに設立。主なプロジェクト/羽田空港 ANA SUITE LOUNGE、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル 露天風呂、大手町ファーストスクエア サンクンガーデンなど。
今日はこの「城本さん」という人物を、ただただ紹介します。絶賛紹介します。なぜなら城本さんの考えを世の中にもっと知ってほしいから...!noteというツールを最大限活用して、みなさんにも「便利に作られすぎた社会」について考えていただきたいから、筆をとります。お付き合いください。
以下、一人の空間デザイナーが「デザイン」という分野の中でも、なぜ畑違いの花屋の空間デザインを手がけることになり、どのように現在のデザインを確立してきたのか。
デザイナーとしての「差別化」のため花屋へ
16年前、フラワーショップ「青山フラワーマーケット」の店舗デザインを手がけるためパーク・コーポレーションの門を叩いた城本さん。
それまではインテリアデザイナーとして、アパレル業界でハイエンドなデザインを武器に活動していました。わかりやすく言えば、洋服を展示する台は角を尖らせるだけ尖らせて、有機的な形状や素材感は一切使わず、什器はいかにシンプルに洋服を際立たせるか。そういったことが美とされる世界で、花屋のイメージとは真反対の空間を手がけていました。
そんな城本さんが花屋の店舗デザインを始めたきっかけは、デザイナーとしての「差別化」が目的だったそうです。今でこそ観葉植物をはじめ室内緑化は一つのブームになっていますが、当時は植物を扱うデザイナーはまったくと言っていいほどいなかったと言います。
また花という未知の「専門性」を身につけることで、今までになかった切り口や発想を生み出し、自身のオリジナリティに融合することもできるのでは。そういった思考もあったようです。
例えば、心理学を学んだ建築家はより人の行動を意識した建築をつくることができる、など。城本さんにとっては、それがハイエンドのブランドを手がけていた時には排除していた要素、「有機的、自然な曲線、素材感」といったものだったのですね。
「青山フラワーマーケットの店舗デザインの基礎を築く中で、気づいたことがありました。それは多くの人が『花や緑って、なんかいいよね。』と感じているということ。しかしそのような良い印象を無意識に持っているにも関わらず、わたしたちにとってそれは「当たり前」の感覚すぎて普段あまり意識されていないということもまた事実。」
言われてみると確かに、特別花が嫌いという人に出会ったことがないような気がします。植物は好感度の高いコンテンツと言えるかもしれません。
城本さんはこの持論から、「花や緑って、なんかいいよね」という無意識のうちに人が持っている当たり前な感覚をデザインして形にし、「人と植物の良い関係をつくりたい」と思い、parkERsという空間デザインブランドを立ち上げることになりました。
便利すぎて人の「感覚」は鈍化していないだろうか?
城本さんが生まれ育ったのは、まわりを山々に囲まれた広島県の自然豊かな環境でした。
そういった環境では花や緑が当たり前のものすぎて「緑が持つ効果」について感じるよりも、生活を便利にしていく「新しい技術や都会の流行といった刺激」を感じる情報を常に求めていたそうです。デザインの仕事をしたいと思ったのも、非日常的で様々な刺激のある世界への憧れがあったとのこと。
しかし生まれ育った環境での生活よりも都会での生活が長くなり、自身の生活環境をよく見返してみたとき、そのほとんどが直線で囲まれた人工的な風景の中で暮らしていると気づいたそうです。
そういった風景は効率的に作られていて無駄がなく、生活の環境も技術の進歩によりスピーディーにいろいろな事が処理されていきます。
効率的な環境には空間的にも時間的にも遊びがなく、その結果気持ちを整えるタイミングが失われているように感じたそうです。
城本さんは言います。
「便利な世界」「溢れる情報」は満たされるものも多いが、人の感覚はどんどん鈍化していく。感じる力が弱まっている、と。
東京で暮らし始め15年近く経った頃、多くのストレスを感じた時期があり、その時期には駅までの近道よりも緑が多くある遊歩道を選んだり、休日の過ごし方も郊外を訪れたりして自然に触れるきっかけを求めるようになっていたといいます。
この意識の変化は自身でもよくわかっていなかったそうですが、植物を日常に取り入れる提案をする立場になって初めて気づいたのは、「何気無い木漏れ日の風景や新緑の生命力が、自分をケアしてくれたり、エネルギーを与えてくれていた」ということ。
まだ誰もやっていない、植物のもつ力を切り口に、デザインを開拓したい。人と植物がともに育ち、互いにコミュニケートできるような新しい文化を広めたい。
こうして「デザイン×専門性(グリーン)」という新たな分野は確立していくのでした。
なぜ「公園の心地よさ」にこだわるのか?
デザイン会社でもなく、植物屋さんでもなく、parkERs。
公園の心地よい要素を室内に取り込み、空間をデザインするparkERs。
わたしたちは室内に植物を取り込むだけにとどまらず、「陽の光」や「小川の水」など、公園の心地よい要素を因数分解してデザインに落とし込みます。
その背景には、このような思いがありました。
「公園はさまざまな人々が集まる場所です。ランニングしたり、読書したり、寝転がったり、談笑したり……。同じ場所にいながらも、それぞれが思い思いに過ごし、ゆっくりと流れる時間を楽しんでいます。そんな風景を、都市の中に生み出して行きたいと思ったのです。」
こうしてparkERsのデザインは形作られていくのでした。
まとめ
●花屋の空間デザインをはじめたのは、デザイナーとしての差別化が目的。
●効率的に作られた情報が溢れる都市での生活は、人の感じる力が弱まっていると感じ、デザインを通して解決したいと思った。
●多様な人がそれぞれの時間を楽しむ「公園」のような心地よい空間を、便利だけれど“遊び”のない都市部にデザインするためparkERsを立ち上げた。
設立したのが約5年前、それが今ではどのようなデザインとなり、都市に広がっているのか。気になる方はこちらから写真と共にご覧いただけます。
parkERsと青山フラワーマーケットの店舗デザインにおけるクリエイティブの総責任者。
若干強面に見えるときもあるようですが、実はとっても気さくでユーモアたっぷり、少年のように純粋な城本さん。
デザイナーとして新たな切り口を開拓した、我らがパイオニアの今後の活躍にも注目です。
*この記事を書いた人
森 美波
park corporation/parkERs
ブランドコミュニケーション室所属
社会人2年目。空間デザイン事業部parkERsで
PRとマーケティングを日々勉強中。
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