COLLECTIVE レビュー #16 ショージサキ『ガール イーツ ガール』(東京都)
自身のイラストや写真はもちろんのこと、日々の日記やレポートなど、さまざまなスタイルの ZINE を見てきたけれど、毎年必ず「こんなジャンルのZINEもあるのか」と驚かされる。
中でも今回異彩を放っているのが、短歌ZINE 。歌人・ショージサキさんによる「ガールイーツガール」という作品。表紙のブルーがこの季節にちょうどよくて、たくさんの ZINE が並んだ空間でもひときわ鮮やかだ。これにまさか<短歌>が掲載されているなんて誰が思うだろうか。
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なじみのない短歌の世界を開いてみる。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #16
ショージサキ「ガールイーツガール」
2018年以来、4年ぶりの参加となるショージサキさん。前回は「短歌を作る」プロセスが漫画で描かれた「秘密基地女子おろろん図鑑」での参加だった。歌人(俳句は俳人、短歌は歌人)としてのキャリアは中学生の時からはじまっていて、2022年には第65回短歌研究新人賞を受賞している実力派。現在も歌人でありながらも「短歌に興味のない人でも楽しめる」をコンセプトにした ZINE の制作などを手掛けている。たしかに「短歌」と聞くと、それだけで「むずかしそう」だと思う人も多いと思う。
今回エントリーのあった「ガールイーツガール」は、短歌の概念がひっくり返ると思う。少なくともぼくは「こんなに自由でいいんだっけ」と不安になったくらいだ。つい
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と歌を目で追っていた。それくらいには自由だった。
印象的なのは、レトロ印刷 JAM で作られたというぬくもりのあるプリント。そして短歌と共に散りばめられている写真のようなグラフィックやイラスト。短歌の世界に入り込みやすいデザインになっているのがわかる。
短歌を詠むというよりは、1冊を通じて短い小説を読んでいるかのようで心地がいい。もしくは彼女の残していった夏のカケラを、ゆっくり1つ1つ拾い集めて行くような作業。全体に漂う夏の気だるさと、風の心地よさ。どこかノスタルジックな気配。これを「小説」と言われると読むのに構えてしまうかもしれないけれど、短歌の調子がリズミカルで、最後まで一気に読んでしまう。
ちなみにこのページが一番好き。短歌ってこんなにストイックに空気を運んでくるんだとハッとなった。
「短歌」に偏見やすこしの難しさを感じているひとにこそ手に取ってほしい1冊です。短歌、チャレンジしてみようかなとも思いました。きっと楽しいだろうな。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
元々短歌の創作をしていたため。短歌単体だけではなく写真やイラストもあったら楽しいだろうなと思い、少し不思議なデザインの ZINE にしました。
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